【建築知識2025年6月号】文明発祥の地「古代オリエント」。建築と街並みを通して、古代文明の謎に迫る…!

建築知識2025年6月号の特集は「古代オリエントの建物と街並み詳説絵巻」です。
古代オリエントは、人類最初の文明が生まれ、最古の建造物がつくられた地。
古代文明の高度な技術と生活の様子を伝える建物や街並みは、
その象徴性・神秘性から多くの人を惹きつけ、さまざまな神話や物語の舞台となってきました。
本特集では、メソポタミアを中心とする古代西アジアと、ナイル川流域に栄えた古代エジプトについて、
各文明がつくりだした街と建物の特徴を歴史に沿って徹底解説!

文明の誕生と変遷を知ることで、
「建築とは何か」を知るはじめの一歩になるかも!?
その一部をちょっとだけご紹介します!

メソポタミアから発生した文明が人類初の集落をつくる…
文明発生から古代オリエントの統一までを俯瞰する勢力関係図!

古代オリエントの地域は、ティグリス川・ユーフラテス川の流域であるメソポタミア、その東側に広がるイラン高原、現在のシリアからイスラエル周辺で地中海に西側で接するレヴァント地域、西アジアの西端に位置する半島アナトリア、ナイル川流域に広がる古代エジプトで構成されます。

北メソポタミアを取り巻く丘陵部では、人類史上最も早く農耕・牧畜が成立(紀元前8000年ごろ)。栽培や家畜化に適したムギや野生のヒツジ・ヤギが生息した地域には、紀元前13000年ごろには人が定住して狩猟・採集を行う生活を開始しました。その後紀元前8000年を過ぎると、気候が温暖で土壌の養分が豊富な、メソポタミアと現在シリア・パレスチナを結ぶ三日月形をした地帯(肥沃な三日月地帯)に農耕・牧畜を生業として暮らす人類初の集落がつくられ始め、小さな集落が各地に点在する時代を経て、紀元前4000年ごろから前2500年ごろにかけて、人口数千~数万人を擁する都市が形成されていきました。

 

人類史上最古の建造物群「ギョベクリテペ」
謎に満ちたその建物の特徴とは…⁉

ギョベクリテペは、現在のトルコ南東部の丘陵地に位置する、20基近くの円形の建造物群からなる遺跡。
その建物用途には諸説あり明確にはなっていませんが、特筆すべきは、この大規模な建造物群が農耕や定住が始まるよりも前、狩猟採集時代に築かれた点です。
通説として、大規模建築を可能とするような文明の成立は定住と農耕によって進んだとされてきました。同時期のアナトリアの南東地域ではまだ狩猟採集が中心だったため、この建物群の発見は、従来の通説を大きく覆すこととなりました。

 

生者と死者が混ざり合う…⁉
古代アナトリアの居住空間

紀元前7500年ごろからアナトリア高原(現在のトルコ中南部)に現れた集落「チャタルホユック」。
その住居は、間仕切がない1室構成で、調理・休息・作業・埋葬といった複数の機能が同じ空間に集約されており、現在の住宅とは異なる構造的特徴を備えていました。炉のそばには生活の拠点となる1段高い基壇が設けられ、床下には死者が埋葬されました。また、1階には屋外に通じる扉や窓はなく、屋上の開口部を出入口として木製の梯子を使って出入りしていました。集落の住居どうしはつながっており、屋根が集落全体の通路として機能していました。

 

広大な空中庭園は存在したのか…⁉
メソポタミアの大都市「バビロン」

紀元前2000年ごろ建設された、南メソポタミアの都市「バビロン」。紀元前18世紀にはハンムラビ王により大都市につくり替えられました。
「バビロンの空中庭園」は、古代世界の七不思議の1つ。バビロンには、大きな緑の山に似せて日干しレンガでつくられた、多種多様な樹木が植えられた階段状の庭園があったとされる説があります。ただし、空中庭園が実際の建造物であったのか、それとも詩的な創造物であったのかは不明であるとされています…[※]。

※バビロンの空中庭園は、ニネヴェに建設された庭園だという説もある

 

都市は神々の肉体…⁉
古代オリエントで信仰されたさまざまな神

古代オリエント(西アジア)では、神々は土地と不可分の関係で結ばれており、比喩的にいえば集落や都市は神の肉体であるとされていました。だからこそ、神殿は最初に建てた場所から容易に移すことはされず、同じ場所に繰り返しつくり替えられることで、やがて特徴的な基壇の発達を促し、ジックラト[※]を誕生させることになりました。
古代西アジアの各都市には、そこに祀られる多様な属性をもつ神が存在し、人間の活動に深くかかわっていました。


※ジックラトとは、「そびえ立つ」という意味の語で、古代オリエントで日干しレンガによって築かれた階段ピラミッド状の聖塔

 

このほかにも、さまざまな建物や街並みなどを詳細に解説しています!

建築知識20256月号では、文明の誕生からアケメネス朝ペルシアによる古代オリエント統一までの建物や街並みを、カラーイラスト付きで詳しく解説しています。
都市・神殿・王宮などに加えて、住宅や家具など暮らしと文化に焦点を当てた解説もありますので、より深い理解につながるはず!
ぜひこの1冊で、古代文明の謎に迫ってください…!

 

『建築知識25/06 文明誕生の地、ギルガメシュからバベルの塔、空中庭園まで 古代オリエントの建物と街並み詳説絵巻』

本体1,800円+税

B5判 154ページ