「単純化してなぞる!」 背景画のプロに学ぶ、まさかの画力向上テクニック

「背景イラストが苦手」「曲線のあるモノがうまく描けない」そんな人は、単純化してなぞることで作画の悩みが解消するかもしれません。今回は、日本一有名な背景イラストレーターのMAEDAX氏に、初心者でも今すぐ実践できる“単純化してなぞる作画”の方法と、“学校の男子トイレの便器”の描き方を教えてもらいます。この記事の内容は、動画でも観られるので、気になった人は記事の一番下をチェックしてください!

学校の便器をなぞろう!

みなさんこんにちは。アシスタント背景美塾のMAEDAXです。
今日は「学校の男子トイレの小便器」を使って、微妙なカタチのモノが上手に描けるようになるポイント解説していきます。
結論から言うと、モノのカタチは「なぞる」ことで理解しやすくなります。
では、実際にこちらの学校のトイレを参考に、小便器をなぞってみましょう!

 

「今どきの便器(左)」と「古い便器(右)」の2つを用意しました。
「今どきの便器」はセンサー式ですね。
センサー!センサー!
駅とかでよく見る自動水洗式の便器は、今や学校でも標準仕様になっているそうです。
一方「古い便器」は、ボタンで流すフラッシュバルブ式の懐かしいタイプです♬

今どきの学校の小便器(左)と古いタイプの学校の小便器(右)

 

出っ張っている部分は、中心線を引いて立体感を把握する

小便器の下は、真横から見るとこのように手前に突き出ています。
この突き出ている部分に、縦と横の中心線を2本引いてみましょう。
この線を引くだけでも、「手前の面と奥の面の見え方の違い」や「便器の立体的な膨らみ」が分かりやすくなると思います。

 

曲線は、直線や四角を基準にする

次は便器の一番上。ここはよく見ると、手前が少し内側に湾曲しています。
このように湾曲している複雑なカタチは、まず、四角形を描くことで、とらえやすくなります。

 

さらに便器の上面は、横から見ると少しだけ手前に向かって傾斜しています。
このような傾斜も、まずは水平面の直線を描いてから、それを基準に描くことで、バランスを崩すことなく、きれいなカタチを出しやすくなります。

 

なにか「曲がったカタチを描くと、歪んじゃうな」ってときは、いったん「直線」もしくは「四角形」を描いて、それを基準に曲線を引くことで、比較的描きやすくなります。

 

今どきの小便器は下のほうをスッキリさせる

それから今どきのトイレは、下の方が少しすぼまっていきます。
昔の便器のように、普通に直線で描くと、こんな風に垂直に落ちていきますが、

 

これが下に行くにつれて、すぼまります。
真正面から見ると画像中央の赤い図のようなカタチですね。
このように真横や真正面から見た図は、頭の中でカタチをシミュレーションするときの便利な資料になります。

 

残りのラインもなぞっていくと便器のおおよその外形が完成しました。

 

凹んだ部分にも、中心線を引く

これでも十分ですが、このように真ん中に線を描いて、内側の窪みのカタチを出してみるのもいいでしょう。
ちなみに、古い便器は、窪みの側面が奥の方にグイっと入り込んでいます。
ここは掃除が大変そうですね。
今の便器は、側面に少し段差はありますが、ノロ~ンっとしています。
見栄えはいいですけど、曲線が多いので、描きにくくなります。
こういうポイントを抑えると、便器の昔と今を描き分けやすくなると思います。

 

昔の小便器の特徴は、三角の窪みとタイルの床・壁

あと、古い便器って、ここに三角があるんです!
僕はここが好きで、掃除するのは大変そうですけど、造形的には見事な三角です。
また、床と壁はタイル貼りですよね。

 

今どきの小便器は、床から浮いている

一方、今どきの便器は下がスリムになっていて、床から少し浮いているんですよね。
「モップで葺き掃除しやすくする」という考え方が今の学校のトイレでは主流のようです。
そのため、床は昔と違ってビニルシート仕上げになっています。

 

まとめ

なんとなく難しいカタチは、こうやって単純化してなぞった後に、曲線・厚み・段差などの細かい部分を描いていくのがお勧めです。
僕自身も資料を見ながら描くときは、「カタチを単純化してから、細かい部分を描く」という手順やっています。

 

最後に「今どきの便器」と「古い便器」のポイントをまとめたイラストを貼っておくので、参考にしつつ、皆さんもぜひ、小便器の作画に挑戦してみてください!
また、便器のイラストは、こちらからダウンロードできます!
https://www.xknowledge.co.jp/html/attachment/569/gakkou_moe_benki.zip
よければご活用くださいね!

 

この記事の動画バーションはこちら!!

 

2回へ、つづく

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MAEDAX 著
128ページ
B5版
定価2,000円


MAEDAX
鹿児島県出身。福岡の短大を卒業後、瀬口たかひろのアシスタントとして2 年半活動。週刊漫画連載のチーフアシスタントなどを勤め、15 年に渡り実績を詰む。兄弟子にあたる畑健二郎は「プロのアシスタントとしては恐ろしく有能で、もの凄い技術の持ち主」と評する。同名義で声優名鑑に載るなど、多方面に活躍し、漫画家アシスタントとして日本で一番の知名度を誇る。独立後、フリーのアシスタントを経て201311月に『アシスタント背景美塾』を立ち上げる。著書に『MAEDAXの背景萌え!』(一迅社)、 『即戦力の漫画背景』(幻冬舎コミックス)がある。
・アシスタント背景美塾公式サイト:https://haikeibijuku.com/
・X(旧Twitter)背景美塾公式アカウント:@haikei_bijuku
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