エコハウスの原点を探る本
高断熱・高気密住宅は環境や人に優しい住宅であります。日本の高断熱・高気密住宅は、ヨーロッパで生まれたエコロジー・バウビオロギー建築や、日本の気候に合わせて進化してきた古民家のほか、古今東西の建築や設計者・施工者の影響を受けています。そのことを知るうえで参考になる書籍を選んでみました。
西方里見さんが選んだ本はこちら!
01.建築環境論
02.エコロジー建築
03.住まいの伝統技術
04.バウビオロギー:新しいエコロジー建築の流れ
05.パッシブハウスはゼロエネルギー住宅
01.建築環境論
著者の岩村さんは、フランスの大学で学んだあと、ドイツで最新のエコロジー住宅を設計していました。帰国後は長年にわたって大学で教鞭を取り、現在も設計を行っています。
この本では、主にドイツの建築環境論全般を紹介されています。特にエコロジー(生態学)の中の狭い領域としてバウビオロギー(建築生物学)が紹介されており、日本の出版物では初めてこの概念が解説されたのではないかと思います。
岩村さんも設計に関わっているドイツのコーポラティブ型エコロジー住宅である「ダルムシュタット・カッセル・エコロジー団地環境共生住宅」が紹介されているのですが、この住宅は他のエコ住宅とはデザインが一線を画しており、その理由がバウビオロギーにあることが分かりました。高断熱・高気密住宅は、生産エネルギーが少ない、化学物質などの使用が少ないという点が評価されていますが、その背景にはバウビオロギー・エコロジー的な考えがあることが理解できます。
建築環境論(鹿島出版会刊)
定価:1,800円+税
著者:岩村和夫
ページ数:218
判型:B6判
発行年月:1990/03
02.エコロジー建築
1990年代から2000年代にかけて、化学物質過敏症が社会問題となり、建築関係者の間でどのように対策すべきか、さまざまな意見が交わされました。そのとき最も信頼できる指標となったのが、ドイツの環境と健康に関する消費者雑誌「エコテスト・マガジン」です。この雑誌には、生活用品から玩具、化粧品、建材に至るまであらゆる領域の商品を厳格にテストし、その安全性を評価した記事が掲載されており、筆者自身もこの記事を建材選びの参考にしていました。このエコテスト・マガジンに掲載された建築に関する記事をまとめたものが同書です。
同書には、人間にとって安全な建材が紹介されているのですが、高断熱・高気密住宅の本場である雑誌ですから、高断熱・高気密住宅に使用する断熱材、暖房設備、太陽光発電、屋上緑化・壁面緑化システムなどが紹介されており、とても参考になりました。特にコルク・木質繊維板・セルローズファイバーといった自然系の断熱材について詳しく紹介されています。
エコロジー建築(青土社刊)
定価:2,200円+税
著者:高橋元
ページ数:230
判型:B6判
発行年月:2008/09
03.住まいの伝統技術
雑誌「住宅建築」の連載をまとめた書籍で、古民家などの伝統的な住まいに用いられてきた建具や外装の工夫、材料の使い方などを一つひとつ採集し、記録し、紹介しています。
日本の昔の家は、夏の暑さや冬の寒さを防ぐ工夫が盛り込まれていました。雨戸(取り外し可能な敷居)、雨除け板(住まいのレインコート)、土縁(雪深く日射が少ない寒冷の日本海側で普及し、土間を内部空間に取り込むことで、室内にいながら外作業などが行える)、高窓(遠隔操作可能な窓)、芝置き棟(生きた植物を利用したもの)、茅壁(板壁や土壁の外側に茅壁を配置する外断熱)、落とし板(大きな開口部を雪から守るために方立間に板を落とし込む)、雪囲いなど……。どれも現代の家づくりにも生かすことができます。
住まいの伝統技術
定価:3,786円+税
著者:安藤邦廣・乾尚彦・山下浩一
ページ数:167
判型:23.7×21.6cm
発行年月:2002
04.バウビオロギー:新しいエコロジー建築の流れ
高断熱・高気密住宅は、人の健康と地球の環境に負荷をかけないことが大きなメリットですが、その背景にはバウビオロギー・エコロジー的な考えがあることをこの本から学びました。
著者である佐々木さんは、秋田県出身の建築家で、長年にわたりスイス・チューリッヒで設計活動を行っています。設計の根底にあるのは、ドイツ・スイスなどの中欧で生まれたバウビオロギーの考え方。バウビオロギーとは、「建築(バウ)」と「生命(ビオ)」と「精神(ロゴス)」からなるドイツの造語で、直訳するなら「建築生物学」「建築生態学」と訳せます。建物を考える際には、建築学だけでなく、生理学・心理学・生態学など人と環境に関わるさまざまな観点から考えるというものです。西欧で生まれたエコロジー住宅にはバウビオロギーの考え方が反映されていますが、同書では、建築や工法だけでなく、その製造過程までをバウビオロギーに基づいてどのように設計すべきかが分かりやすく解説されています。また、木造とレンガ造などの工法別のバウビオロギー度合い、各建築部分・建材・運搬過程の度合い、消費エネルギーの度合いなどをエコポイントの数値で評価しているなど、興味深い情報も数多く掲載されています。
バウビオロギー:新しいエコロジー建築の流れ(学芸出版社)
定価:2,100円+税
著者:佐々木 徳貢
ページ数:190
判型:A5判
発行年月:2009/02
05.パッシブハウスはゼロエネルギー住宅
著者の野沢正光さんはエコロジー、パッシブ、建築生産といった思考をもったバランスのよい建築家です。意外なことに、37年前に出版された「北国に学ぶ[暖かい住宅]」で、野沢さんが札幌の上遠野徹さん、断熱二重ブロック建築の圓山彬雄さんと座談会(上遠野徹、北海道住宅を語る)を行っており、この頃から大きな容量の機械設備暖房ではなく躯体性能を考え始めていたことが分かります。
本書では、エコロジー住宅や自然エネルギーの考え方を古今東西の実例を挙げながら分かりやすく解説しています。なかでも実例解説は、普及型エコロジー住宅の例としてとても参考になります。
パッシブハウスはゼロエネルギー住宅:竪穴住居に学ぶ住宅の未来(農山漁村文化協会)
定価:2,667円+税
著者:野沢正光
ページ数:158
判型:B5変判
発行年月:2013/08
数々の書籍を読み込み、約40年にわたって高断熱・高気密住宅に取り組む西方里見さんの書籍も好評発売中です。
上記の書籍のエッセンスがギュッと詰まった令和版の最新情報が満載の1冊です。
最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版
定価:1,800円+税
著者名:西方 里見
ページ数:272
判型:A5判
発行年月日:2019/06/21
本書では、西方里見さんがエネルギー消費量ゼロ目指した家の考え方やメリット・デメリット、設計や施工、設備の具体的な手法などを事細かに解説しています。
また、著者が設計したゼロエネ住宅も最新の事例を中心に豊富な写真や図面とともに紹介しました。ゼロエネ住宅、エコハウスの入門書としても、マニアックな実務書としても使える必携の1冊です。
ゼロエネルギー住宅のつくり方 最新版
定価:2,700円+税
著者名:西方 里見
ページ数:128
判型:A4変
発行年月日:2023/09/19