“江戸時代の髪型” 大解剖! 髪型がわかれば、大河ドラマ「べらぼう」がもっと楽しくなる!

2025年大河ドラマ「べらぼう」でも大注目の江戸時代。今回は、なかでも当時の女性の髪型について、『日本髪の描き方』の著者、撫子 凛(なでしこ りん)さんにうかがいました。

編集部 以下「編」)2025年大河ドラマ「べらぼう」は、江戸最大のプロデューサーとも言われる蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)が主人公。江戸時代中期が舞台ですね

撫子 凛以下「撫」)はい。「元和偃武(げんなえんぶ)」といって、1615年(元和元年。江戸時代前期に含まれる)には天下平定が完了したとされます。徳川が幕府を江戸に設け、はじめはあらゆる文化が上方(かみがた:現在の京阪神地方)の模倣から始まりますが、次第に江戸独自のものが生まれていきました。

編)ファッションや髪型も、そのひとつなんですね
撫)まさに。蔦屋重三郎が活躍したのは、まさにその江戸文化・爛熟期。女性の髪型も本当にたくさんのバリエーションが生まれ、変遷をたどるだけでも面白いです。

編)「べらぼう」の劇中でも、いろいろな髪型の女性が登場しますね
撫)そうですね。先日の回では、花の井ちゃんや朝顔姐さんが[両兵庫](本書P.43掲載)だったので、テンション上がりました!

「江戸初期の兵庫髷を右横に倒し、残った髪で慎重にもうひとつ輪を作った髪型です。メガネのような2つの輪がかわいいのです」

 

編)花街の髪型は華やかですね。他にも気になった髪型はありますか?
撫)禿(かむろ)ちゃんたちの髪型、[奴島田(やっこしまだ)]もかわいくて眼福でした。どうもありがとうございます、という気持ちです……![奴島田](本書P.92掲載)と名前は同じだが、異なるもの。こちらは[針打ち](本書P.104掲載)に近いスタイル。

編)安達祐実さん演じる吉原の女郎屋のおかみさんは、何という髪型ですか?
撫)おそらく[勝山髷(かつやままげ)](本書P.22掲載)ですが、のちに変化していく[丸髷(まるまげ)](本書P.56掲載)にも似ています。鬢(びん)は下のほうをやや薄くしていますね。これは、当時大流行した[燈籠鬢勝山(とうろうびんかつやま)](本書P.36掲載)の特徴でもあります。

江戸の遊女・勝山が結いはじめ、大流行したとされる[勝山髷]。のちに、髷の形が横に広がった[丸髷]へと変化していく。

編)綾瀬はるかさん演じる九郎助稲荷役の髪型も特徴的ですね
撫)あれは[横兵庫(よこひょうご)](本書P.42 掲載)でしょう。髷を横にグイッと倒し、毛先がピョンと出ているところがかわいい! 江戸時代中期、遊女のあいだで流行したとされる髪型です。

編)本書では、髪型だけでなく、道具や飾りがたくさん紹介されているのも見どころですね
撫)はい。たとえば、櫛(くし)だけでも16種類、笄(こうがい)は18種類紹介しています。本書4章は「装身具」についての章。種類だけでなく、成り立ちや部位名、主な使われ方や、描くときのポイントも掲載している。

編)こうがい……。簪(かんざし)ではなさそうだけれど、なんだか長い棒……ですよね?
撫)たぶんそれです。現代で着物を着るにはほぼ使うことのない道具ですが、この時代にはいろんな髪型で使われているので、知っていると、「あ、これもそうだ!」って、見ていて楽しくなりますよ

 

江戸時代後期の遊女の髪型、[伊達兵庫(だてひょうご)]。2枚の櫛の後ろに挿してるのが笄。

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