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イギリスでは19世紀にゴシック様式が再評価された
イギリスでは、ヴィクトリア女王の治世下で国民国家が形成されていきました。
その背景の1つに、自国の起源を中世に見出す歴史観が浸透したことがあります。
中世のゴシック様式が「国民的様式」として再評価され、宗教建築のみならず、議会、裁判所、大学、駅舎などの世俗建築にも採用されていきました。
これをゴシック・リヴァイヴァル(ゴシック復興)と呼びます。
なかでも、国家・国政の象徴であるウェストミンスター宮殿(国会議事堂)がゴシック様式で再建されたことが、19世紀のゴシック復興運動に大きな影響を与えました。
「国民的様式」で再建されたウェストミンスター宮殿
ウェストミンスター宮殿は11世紀末に建設され、当初は王宮として、その後13世紀以降は議会の場としても利用されました。
1834年の大火で大部分が焼失し、イギリスの歴史的精神を象徴する垂直式ゴシック様式を用いて、1860年に再建されました。
建築家チャールズ・バリー(1795~1860年)が再建の全体構成を担当し、左右対称の古典様式でまとめています。

イラスト:Miltata
建築家の理想を象徴したビッグ・ベン
「ビッグ・ベン」の名で知られ、南東側のヴィクトリア・タワーと対をなす時計塔「エリザベス・タワー」。
市民の暮らしに時を刻む時計塔を繊細なゴシック様式で装飾することで、日々の生活に寄り添いながらイギリスの歴史や価値観を建築として示す役割も担っています。
構造は中世の修道院や教会の鐘塔を手本としています。これは、共同体の時間感覚と道徳秩序の回復という、意匠面で協力した建築家A. W. N. ピュージン(1812~’52年)の理想を象徴しています。

イラスト:Miltata
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