【PR】~次世代ガルバリウム鋼板「エスジーエル」が可能にする建築表現~|石飛亮(WANKARASHIN)

「五島つばき蒸溜所」(長崎県五島市)は、離島で年間降水量が多く、しかも海に近いという条件で計画された蒸溜所です。建物の外装材には、意匠性だけではなく、耐久性やメンテナンス性が求められます。屋根に採用されたのは次世代ガルバリウム鋼板「エスジーエル」を原板に採用した「ニスクカラーPro」。それが織りなす物語を、建築家・石飛亮氏(WANKARASHIN)が語ります。

場所の“歴史”をともに刻む金属外装@五島つばき蒸溜所

「五島つばき蒸溜所」は、五島列島・福江島にあるクラフトジンの蒸溜所です。建物の計画にあたって重視したのは、「可能な限り現地で調達できる部材を用い、維持管理の負担を抑えること」でした。構造を木造としたこともあり、外装材には軽量で耐久性のある素材を選びたいと考え、屋根にはガルバリウム鋼板を採用しました。

 

海と山に囲まれた敷地に建つ「五島つばき蒸溜所」。右隣に見える「半泊教会」との調和を意識して建物の高さは低く抑えられ(6.3m)、母屋・下屋ともに屋根勾配も緩やかに設定されている(母屋は3.5寸と0.3寸、下屋は1.0寸)。こうした緩勾配への対応も考慮されて採用されたのが「ニスクカラーPro GC/シルバー」。とりわけ、母屋の折板屋根は、五島に多い牛舎の原風景を想起させるかたちになっている[※1]。増築した倉庫の屋根には「ニスクカラーPro GH/ブラック」を採用

 

ただし、建物は海のすぐそばに立地しており、塩害への配慮も必要です。最終的な仕様を検討するなかで、福江島で長年板金施工を手がけている旭板金さんから推薦されたのが、次世代ガルバリウム鋼板「エスジーエル」[※2]を原板とする「ニスクカラーPro」[※3]でした。めっき層にマグネシウムを添加することで、従来のガルバリウム鋼板と比べて耐食性は3倍以上。現地での豊富な採用実績も、採用を後押ししてくれました。

デザイン面でも「ニスクカラーPro」は、一般的なカラーガルバリウム鋼板に比べて艶が控えめで、建物全体に落ち着いた印象を与えます。「五島つばき蒸溜所」では、焼スギや柱、天然石、ポリカーボネートなど多様な素材でファサードを構成していますが、「ニスクカラーProGC/シルバー」は光沢が抑えられており、他素材との調和も取れていると感じています。

 

焼スギ、ポリカーボネート、ガルバリウム鋼板。異なる質感の素材が隣り合いながらも調和する屋と外壁の構成である。焼スギの深い陰影と、ポリカーボネートの柔らかな透過性。その対比を、低光沢ながらも硬質な表情をもつ「ニスクカラーPro GC/シルバー」が穏やかに引き締めている。加えて、折板や立はぜ、波板、瓦によって生まれる多様なテクスチュアが夏の日差しによって際立っている

「ニスクカラーPro GC/マットシルバー」(左)と 「ニスクカラーPro GC/シルバー」(右)のカットサンプルを斜めの角度から撮影。シルバーにもいくつかのバリエーションがあり、建築の雰囲気に合わせて最適なものを選択できる

2期工事で採用され、3期工事での採用も検討されている、光沢値1%以下に抑えた「ニスクカラーPro GH/ブラック」(左)と「耐摩カラーSGL/耐摩ブラック」(右)。艶感の差は一目瞭然で、漆黒の表情を表現可能

 

施工性の高さも大きな特徴です。建物の周囲には、狭い山道しかなく大型車での搬入が難しかったのですが、ガルバリウム鋼板なので軽量で運搬しやすく、加工も容易でした。母屋は緩勾配で強度を確保するために折板を用い、下屋には立はぜ葺きの成形品を用いることで、現場での加工を最小限に抑えました。

おかげさまで「五島つばき蒸溜所」はオンライン販売も好調で、すでに倉庫の増築を行い、その屋根にも「ニスクカラーPro GH/ブラック」を採用しました。近い将来には、テイスティングスペースと住宅を兼ねた新たな建物の建設も予定しています。今までの〝物語〞を踏襲した屋根のデザインにしようと考えています。 

 

「五島つばき蒸溜所」(1期工事)と倉庫(2期工事)、テイスティングスペース+住宅(3期工事)の位置関係を示したパース。いずれも海の近くに立地しており、「ニスクカラーPro」のポテンシャルが十分に発揮される。「『五島つばき蒸溜所』とは異なり、コンクリートと焼スギ。特にテイスティングスペースは、間口12mの大スパンを実現させています。屋根は向きが異なる木造の片流れ屋根とする予定です」(石飛氏)

「実際にサンプルを見比べてみると、『ニスクカラーPro』のしっとりした雰囲気は、一般的なカラーガルバリウム鋼板にはない質感でした。3期工事の外壁は主としてコンクリートと焼スギで構成するので、屋根は、『ニスクカラー Pro GH/ブラック』として建物のシルエットをより強調した佇まいにしようかな、と考えています」(石飛氏)

ガルバリウム鋼板を瓦状に成形した「メタルルーフ」。軽量ながらも重厚な外観が実現できる[写真提供=メタル建材]

 

福江島は台風などの風水害が多い地域で、近年は屋根の改修需要も高まっています。特に、ガルバリウム鋼板は、軽量かつ高耐久な素材として有効ですが、立はぜ葺きで施工してしまうと、地域の〝歴史〞が失われてしまうようにも感じます。一方で、金属成形瓦「メタルルーフ」(日鉄鋼板グループ メタル建材)といった製品もあり、伝統的な瓦屋根の記憶を残しつつ、建物の寿命を延ばせます。金属屋根の可能性は、広がっていきそうですね。 [談]

 

※1 畜産向けの屋根材としては金属屋根が一般的だが、採光性を重視した畜舎では、金属屋根と透明波板(ポリカーボネート)を交互に葺く場合もある

※2 ガルバリウム鋼板のめっき層に、マグネシウムの防錆効果をプラスした次世代ガルバリウム鋼板。一般的なガルバリウム鋼板に比べて3倍超の耐食性を実現しており、塩害が懸念される海岸近くでも、海岸から500m以遠であれば、穴あきに対して最長25年、塗膜に関して同15年の品質保証を設定している

※3  原板に「エスジーエル」を採用するとともに、「ニスクカラー」の塗膜をより進化させた高機能カラー鋼板。低光沢で高級感のある外観の「GHシリーズ」、耐傷付性を向上させた「GCシリーズ」がある。原板・塗膜の両面から長期の美観維持を実現する性能を確立しており、全色に塗膜保証15年、一部色相に変褪色保証15年を設定

 

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協賛=日鉄鋼板

建物名=五島つばき蒸溜所

採用製品=ニスクカラーPro GC/シルバー

建物・人物・サンプル写真=鈴木信之介