設計者も住まい手も押さえたい! 「パッシブ設計」を活用して猛暑を乗り切ろう

建築知識2023年7月号の特集は「省エネ建物完全攻略ガイド」。
2023年4月施行の改正省エネ法や、2025年4月の省エネ基準適合義務化を受け、設計者が押さえるべきポイントを総まとめしました。
今回はそのなかでも、これからの暑い夏を乗り切るための、だれもが気軽にできる省エネ手法を紹介します!

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 省エネ!と言われても直接的なメリットを感じにくいかもしれませんが、
 要は「エネルギーの負荷をかけずに快適な環境づくりを行う」ということ。
 快適な環境で過ごせるということが最大の利点ともいえるでしょう

 

 

パッシブ設計とは?

パッシブ設計とは、高性能設備機器の利用などの人工的なエネルギーに頼らなくても*1、自然エネルギーを有効活用することで快適でいられる環境をつくる設計手法のことです。

たとえば、太陽光や自然通風の利用などがそれに当たります。設備機器にお金をかけない分、躯体や開口部などの建物そのものに資金を投入できるのもメリットの1つです。

その手法は、専門的な知識が必要な難しいものから、誰もが手軽に取り入れやすいものまでさまざま。低コストで高い省エネ効果が得られるものもあります!*2

設計者だけでなく住まい手や建物利用者も、基本的な知識を押さえて一年中快適に過ごせる家づくりを心がけましょう!

*1人工的なエネルギーによる高性能な設備を積極的に導入・活用する設計手法はアクティブ設計といいます
*2パッシブ設計を取り入れるだけで、建築物において最大3050%のCO₂が削減可能といわれています

 

パッシブ設計で意識したい9つの要素

パッシブ設計には、下記の9つの要素が重要です。
主に新築を計画する場合に、押さえておくとよいでしょう(⇒特集81ページ)。
蓄熱、自然通風・換気については記事の後半で事例とともに詳しくご紹介します。

パッシブ設計に必要な9つの要素

 

誰でも手軽にできるパッシブ手法

既存の建物や建築実務者以外でも、気軽に取り入れられるパッシブ設計の手法をいくつかご紹介します(⇒特集82ページ)。

たとえば、太陽光発電パネルなどの設備機器を導入すると、効果は発電効率(一般的には15%程度)など機器の性能に左右される反面、太陽光を直接採り入れた場合(ダイレクトゲインという)は、80%近いエネルギーを熱量として利用でき、高価な設備費もかかりません。パッシブ設計のポイントは、このダイレクトゲインにあります。日射(熱や光)を夏は遮り、冬はうまく採り入れる計画が基本となります。

(また、本特集では太陽光発電設備の利用やエアコンなどの空調機器・照明機器の効率的な節電方法なども詳しく解説しています。節電・節約のために押さえたい知識が満載です!)

南面に落葉樹を植える

建築物の南側に落葉樹を植えると、夏は茂った葉により室内に入る日射を遮ることができます。
冬には葉が落ちるため、暖かな日差しを室内に採り入れることができます。

グリーンカーテンを設置する

庭やバルコニーにネットを張り、プランターで栽培したゴーヤやヘチマ、ブドウなどの植物を這わせて覆うグリーンカーテン。
マンションなどでも取り入れやすい手法です。

可動ルーバー(横・縦)を付ける

ルーバーは角度を調整するだけで、室内に採り入れる日射を自由にコントロールできます。
また、日射は遮りながら通風は確保しやすいのも特徴です。
窓の外側に設けることで、夏の日射遮蔽効果はさらに大きくなります。

固定庇を取り付ける

庇の深さは夏に太陽光が差し込む角度に対応する必要があります。
南中高度だけでなく、東から低い角度で差し込む朝日、暑さが増す午後の日射や、15時を過ぎるとほとんど水平に差し込む日射も考慮しましょう。

外部床や木製デッキをつくる

南面に庇などを設けた場合でも、外部床や木製デッキなどを設ければ、太陽光を反射させて室内に取り込むことができます。
直射光でなくても十分な明るさを得ることができ、
熱は遮りながら光のみを利用できる手法です。

 

より本格的なパッシブ設計の活用事例をご紹介!

➀壁や床に蓄熱する

蓄熱とは広義ですが、パッシブ設計においては、熱容量の大きな材料に熱を蓄えさせ、時間差をおいて利用する技術を指すことが多いです。パッシブ設計の最も有効な手法といえ、昼間に太陽熱を吸収・蓄熱し、夜間にその熱を放出。安定した室温を保てるのも特徴です。

蓄熱する部位(蓄熱体という)に熱容量の大きな材料を用いることに加え、その空間に与える熱がしっかり確保されていることや、与えられる熱量に対して蓄熱体の断面(熱容量)が適切であることが重要なポイントです。

ただし、その空間に蓄えられた熱が外部に逃げていくような熱橋や隙間風が多いと、蓄熱の効果は得られません。蓄熱設計においては、蓄熱体の容量、蓄熱体に供給する熱の種類、熱を蓄熱体に蓄える手法、そして蓄熱体から人体への放射熱の伝達方法などが課題となります(⇒特集84ページ)。

②自然通風・換気が可能な窓の配置

自然の風に頼るだけでは、快適な環境を確保することは難しいですが、室内に人工的に温度差を発生させると、気流(風)を生み出すことができます。温められた空気が軽くなり上昇すると、その空気を補うように下部に冷たい空気が流れ込みます。
この現象を自然対流といいます。自然対流を活用して、高低差と温度差により行う換気(通風)を「温度差換気」または「重力換気」と言います。風がない日には、温度差を利用した重力換気を用いましょう。

また、通風用の窓の原則は次の2つです。
➀風には入口と出口が必要
②風の流れ方は下から上
この原則に逆らうと、いくら窓を開けても空気はうまく流れません。

*3 風の流れの断面積を狭めることにより、圧力の低い部分が生まれる現象のこと。室内が負圧になることで吸引効果が生まれ、これを利用して室内の空気を排気する

 

特集内では今回紹介していないほかのパッシブ設計についても、
有効な建材・省エネ検証の過程・さまざまな活用手法を、くまなく紹介。
是非チェックしてみてくださいね。

 

 

目次構成

気候危機の深刻化 エネルギー価格も高騰 20

建築物に求められる省エネ・省CO2とは 21

1章 制度

日本の家は寒すぎる! 目指せ、室温18℃ 22

省エネ・断熱性能、どれくらいまでを目指すべき?  24

住宅・建築物の省エネ化に向けた規制強化が続く 26

省エネ基準への適合義務化で特例許可が創設 建材・建設時のCO2排出量も考える 30

新制度で環境保全と安全面を確保 31

ZEH水準等の構造基準が見直しに 34

長期優良住宅認定で長く安心して住める家を 36

太陽光パネルの設置で雨漏り!?瑕疵担保履行法 37

フラット35は省エネ基準適合が必須 38

建築物省エネ法はBEIと外皮性能の2本柱 39

住宅の外皮性能はUA値とηA値で表す 40

各制度の申請~完了検査の流れを押さえよう 42

省エネルギー建築物への支援制度 44

2章 躯体

特徴を押さえて選ぼう 断熱材の基本知識 46

建築物の各部に確保すべき断熱性能を理解する 48

木造の断熱は気流止めと結露対策が必須! 50

RC造は熱橋の対策を施して外断熱に 51

S造の断熱は熱橋対策や結露対策が要! 52

ガラスとサッシの性能を高めて伝熱損失を防ぐ 54

開口部の改修で断熱性能をアップさせよう 56

断熱性能を高めたら内部結露に注意  57

近い将来、断熱等級6.5を標準にしよう 58

新築ではまず目標の断熱基準を設定 60

断熱改修は工法と価格のバランスが重要 62

地域区分×断熱等級別に見る断熱仕様・コスト  64

外張り断熱で内・外装を木質化する 66

CLTの断熱・蓄熱性能を利用する  67

3章 設備

住宅は給湯と空調の消費電力を抑える 68

オフィスビルは運用改善で省エネ  69

太陽光発電設備の種類と選び方を知る 70

蓄電池の活用で経済的な電力消費を 72

省エネ給湯器と雨水利用で水をエコに利用する 74

照明には制御システムを導入する 76

床暖房の種類は総合的に判断して選ぶ 77

エアコンのエネルギー消費を減らす方法 78

エアコンは使い方を工夫して省エネに 80

4章 計画

自然エネルギーを利用して省エネに 81

夏は日射を遮り冬は日射を採り入れたい 82

遮熱性能を高める建材を効果的に用いる 83

ダイレクトゲインで四季を通して快適な室内環境に 84

窓の計画を工夫して通風を確保する 85

採光・通風・自然の力で快適な住宅に 86

パッシブ換気と床下暖房で快適に 90

植栽を生かして熱環境を整備する 91

パッシブ設計は総合的に計画しよう 92

ZEH -Mの普及・拡大のカギは? 94

 

 

 項目ごとにキーワードとなるキャラが解説に色を添えます。

 楽しく省エネを学びましょう!

 

 

建築知識23/07 省エネ建物完全攻略ガイド

定価 1,800円+税
ページ数 154
判型 B5判
発行年月 2023/06
ISBN 4910034290734