将来を見据えた広くフラットな間取りが正解!
平屋は上下間の移動がほとんどなく、バリアフリーと親和性が高いのが特徴です。そのため、老齢期の生活を想定して間取りや設えを検討したいところ。特に水廻りは、将来的に車椅子を使用する場合に備えて、初めから広くつくっておくか、間仕切壁を撤去しやすくしておくなど、可変性をもたせておくとよいとされています。
水廻りと寝室を近くに配置した回遊動線が正解!
くらし設計室が手がけた「続・三原の家」は、もともと暮らしていた2階建ての家(築30年)をリノベーションした事例。60歳代を迎えた夫婦が心豊かに暮らせる終の棲家として、平屋のように1階だけで暮らしが完結するよう設計されています。
もとの間取りは、玄関から廊下・洗面室を通ってキッチン・ダイニングに至る動線で、不便でした。そこで、特徴的な雁行型の平面はそのままにして回遊動線をつくり、その動線上に各部屋を配置。L字形の縁側部分は、ポーチ・アプローチ・駐車場・テラス・サンルームの機能があり、中間領域としての役割も担っています。
立体イラストで設計テクニックをチェック!
\テクニック1/
駐車場から玄関まで雨に濡れずに行けるよう、増築部分の屋根をL字形にまわしています。アプローチは段差をなくしてスロープ(勾配1/13)に。内部の扉はすべて上吊り式の引戸とし、レールなどによる段差が床にできないように配慮しました。
\テクニック2/
住まい手は60歳代の夫婦。終の棲家となることを想定した設計では、寝室と水廻りを近くに配置するのが望ましいです。トイレの広さは従来の2 倍に広げており、引戸を2カ所に設置。これで洗面所からも廊下側からもアクセスできます。
\テクニック3/
リビング・ダイニングは15.6畳。決して広くはないなかで、雁行型の形状が空間を分断しないよう、リビングとダイニングの間の壁にアールをつけて一体感を出しました。
\テクニック4/
南側を増築したため、南北に奥行きが生まれ、リビングやダイニングの北側が暗くなることが懸念されました。そこで使用しなくなった2階バルコニーを撤去し、代わりに高窓を新設。入ってきた光を一度壁に当てて反射させ、柔らかな光を採り込んでいます。加えて、高窓の開閉に伴い重力換気を図ることもできます。
\テクニック5/
テラスはリビングの床レベルから50㎜下げて設けたものの、庭のレベルからは450㎜高い位置にあります。テラスと南側の庭を自由に行き来できるよう、150㎜ずつの段差を設けました。
\テクニック6/
子世帯の住む家がある南側に向けて開くように、南面にサンルーム・テラス・駐車場を増築。奥行きの深いテラスとサンルームに自然光が入るよう、屋根の先端部分はポリカーボネート製としました。子世帯とは、共有の庭に対して開く向きを変えることで互いの視線が交わらないようになっています。
平屋にまつわる基礎知識と設計テクニックを解説
年々人気が高まりつつある平屋。構造がシンプルで大空間がつくりやすく、土間やテラスなどの半屋外空間や庭との相性も抜群。居住空間がフラットにつながりスムーズな動線を実現しやすいなど、平屋には暮らしやすいポイントが盛りだくさんです。建築知識2023年8月号では、事例をベースに設計のポイントを解説しています。美しく高性能な平屋のつくり方を学びましょう!
建築知識23/08 世界一美しい平屋の作り方
定価 1,800円+税
ページ数 134
判型 B5判
発行年月 2023/07
ISBN 4910034290833