コストを抑えつつ長い梁を使いたいときはどうする?
――複数の流通材を継ぎ合わせれば長い梁もつくれます
三重県菰野町にある花屋「こもの花苑」。「気軽に足を運びたくなる開かれた空間をつくりたい」という建築主の要望を叶えるべく、大きな庭を2棟のL字形の建物で取り囲む計画としました。ここで使用したのが、3本の集成材を重ねてつくった「重ね梁」です。庭に向かって出寸法が2.7mの深い軒を設け、店舗と庭につながりをもたせることで、誰もが入りやすい空間となっています。
耐震性と開放的な空間を両立するには?
――門型フレームを並べれば両立できます
建築主からの要望は「高い耐震性を備えた、開放的な空間」。一般的に、木造で高い耐震性を実現するためには、特に1階部分に耐力壁を増やす必要がありましが、それでは開放的な空間を実現することは困難に。
そこで本事例では、幅8mの「門型フレーム」を採用。バランスのよい耐震性能と開放的な空間の両立を図りました。それぞれのフレームにカーテンや建具のためのレールを仕込むことで、生活やシーンに応じて簡単に空間を仕切れる設えとしています。
一般流通製材で木造の小学校をつくるには?
――「別棟解釈」を活用しながら建物を区画し、合理的なスパンを検討しましょう
学校(2階)は2千㎡以上で準耐火建築物、3千㎡超で耐火建築物としなければなりません(法27条)。燃えしろ設計や、ハイブリッド構造などの耐火・準耐火構造は施工に高い技術力を求められます。本事例では「別棟解釈」※1を活用。耐火建築物棟(事例はS造)を挟み込み、木造部分を2千㎡以下の「その他建築物」※2としました。これにより木造部分は、地元の大工でも施工できる一般流通製材を主体に用いた在来軸組構法の採用が可能になっています。
※1 耐火性の高い壁などで区画することで、それぞれの部分を防火規定上別棟とみなすことができる(住防発14号)。本事例の場合、全体は大屋根でつながっているが、確認申請上では7棟とみなされている
※2 防火規定上対象外となる
木材活用の“最新情報&㊙テクニック”を徹底解説
地球温暖化対策や木材活用の施策として「公共建築等における木材の利用の促進に関する法律」が制定されるなど、“木材大活用時代”を迎えています。本特集で木材活用の最新情報と設計テクニックを学びましょう!
建築知識24/02 木のデザイン図鑑
建築知識24/02 木のデザイン図鑑
定価 1,800円+税
ページ数 142
判型 B5
判発行年月 2024/01
ISBN 4910034290246