ルーペ・顕微鏡の拡大写真で知る、驚きの世界!『ミクロの世界のコケ図鑑』

コケ植物を肉眼で見て種名がわかるのは、ほんの一部の種だけ。種による違いは拡大しないとわかりません。本書はルーペや顕微鏡レベルの写真を多数掲載した、ミクロレベルでコケを楽しめる本。その姿、形のおもしろさに驚くはずです。
本書の魅力を著者の左木山祝一さんに語ってもらいました!

ミクロの写真で知る、あなたの知らない魅惑の「コケの世界」

コケに注目する人は多くありません。
珍しい存在ではなく、ある意味、空気のような存在なのかもしれません。
しかしコケに接する機会があり、そのミクロの世界の美しさや個性の豊かさに気付いた人は、きっとコケに惹かれることになるでしょう。
コケに関心を持ち始めると、名前を知りたくなります。

高倍率ルーペで見たオオバチョウチンゴケ

成熟したホソバミズゼニゴケの胞子体

コケ植物は小さいものです。
小さいために見分けがつけにくいのがコケです。
肉眼で見分けのつくのは、ほんの一部で、コケ観察にはルーペは必需品です。

コケ庭に使われているコケも、コケテラリウムに使われるコケも、特別な環境に育つ大形のコケに限られているのですが、それらのコケでも、似た種類と正確に見分けるには、多くの場合顕微鏡が必要になります。
それだけに、名前調べが適度に難しいのもコケの魅力の一つかもしれません。

 

◆ポイントを押さえた写真が豊富で、コケの同定がしやすい!

コケの名前を調べ始めた多くの人は、たくさんのコケが載せられている図鑑を求めがちです。
しかしコケは小さく見分けにくいもの。
コケの見るべきポイントを十分理解していない人には、図鑑の写真を見てもどれも同じに見えるのではないでしょうか。

本書は身近に見られる比較的大形のコケ55種を、細部まで分かる大きな写真と平易な文で解説し、それらと関連付けて多くのコケを紹介するようにしました。
また必要に応じて顕微鏡写真も多数使用しています。

高倍率ルーペで見たノミハニワゴケ。朔歯は内朔歯と外朔歯の二重になっている

 

◆顕微鏡を持っていない人にも役立つ!

ある程度コケに詳しくなると、顕微鏡写真はとても役立ちます。
しかし一方で、顕微鏡を使ってまで詳しく知ろうとは思わないという人もおられるでしょう。
顕微鏡を持っていない人にも、顕微鏡写真は役立ちます。
どのように役立つのか、まとめてみました。

顕微鏡で見たアブラゴケ。葉の細胞が極めて大きい

腹面から見たフルノコゴケ

①ルーペでの観察に役立つ

小さくしか見えていない特徴には気づきにくいもの。
拡大された顕微鏡写真を見て、その特徴が頭に残っていれば、ルーペではとても小さくしか見えていない特徴にも気づくことができるでしょう。

②肉眼レベルの特徴が納得できる

肉眼レベルの特徴も、その原因が顕微鏡レベルの特徴にあることがとてもたくさんあります(具体例はたくさんありすぎるので、ここでは略します)。
顕微鏡レベルの知識を持つことは、コケに関する理解がぐんと深まります。

③別世界を楽しめる

顕微鏡写真で、ふだん目にすることができないミクロの世界を楽しむことができます。

 

◆さあ、コケを探しに、街に出よう!

本書は5章に分け、どの章も「ツノゴケ類 → 葉状体苔類 → 茎葉体苔類 → 直立性蘚類 → ほふく性蘚類」の順に並べていますので、慣れればかなり素早く目的のページにたどり着けるはずです。
本書では、北海道から屋久島まで身近なコケを54種に絞り、同定時の目のつけどころを記載し、さらにそこから、多くのコケの同定に進めるようにした2ステップ構成にしました。
コケについてほとんど何も知らない、コケの名前を調べはじめたいという人から、かなりコケに詳しくなるまで、永く使い続けていただける一冊となっています。

 

『ミクロの世界のコケ図鑑』

著者 左木山 祝一
定価 1,700円+税
ページ数  240
判型 A5判

著者プロフィール

左木山 祝一(さきやま しゅくいち)

1949 年生まれ、大阪府出身。日本蘚苔類学会、岡山コケの会、大阪自然史センター(監事)、堺植物同好会(役員)。岡山大学理学部生物学科卒業後、大阪の府立高校に勤務。教材研究を兼ねた生物の観察と撮影を定年後も続けるうち、コケにはまる。現在はコケの展示会や講演を行い、コケの魅力を広める活動を行っている。