お菓子の“質感”を演出する
「建築知識」2024年8月号の特集テーマは「古代エジプトからミッドセンチュリーまで 家具とインテリア詳説絵巻」。表紙のイラストは「お菓子の家のインテリア」というお題をもとに制作しました。
このお部屋は、家具や小物、壁や床に至るまで、ほとんどすべてがお菓子でできています。一目で「お菓子の家だ!」と思ってもらえるように質感にもこだわりました。床のキャラメルはツヤツヤにしたり、左の壁のクラッカーは少し焦がしてみたり、右の棚のウエハースは凹凸を意識したり。普段は質感よりも、物のかたちを細部まで正確に描くことで作品全体のバランスをとっているので、今回は新鮮な気持ちで描くことができました。
描かれているお菓子を見て「おいしそう!」と感じていただけたら嬉しいです。
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ポイント1 お部屋の色味を決める
今回は海外のポップな雰囲気のお部屋の写真を参考に全体のイメージを固めていきました。参考にしていたお部屋の資料写真ではお部屋全体が緑や青のライトで照らされており、それがポップでかわいらしいと感じたので照明に取り入れてみました。資料写真はピンタレストやGoogleの画像検索で探すことが多いです。
しかし今回の絵には合わず、お菓子がおいしくなさそうにみえてしまったので、メインカラーは、一般的に食べ物がおいしくみえやすいといわれる暖色系の色(ここではピンク色)を取り入れ、緑や青のライトは天井のみで使用することに。
色味を変えただけで、お菓子が一気においしそうになりました。
ポイント2 床のキャラメルを描き込む
床のキャラメルは質感を描きこまないと普通の床に見えてしまうと思ったので、質感の分かるようなキャラメルの写真を参考にしながら丁寧に描き込みました。
まず、格子状のくぼみを表現するために、縦と横に線を引きます。
その後、凹凸とつやっぽさを表現するためにハイライトを描き込みます。
このように形状と質感を意識して描き込むことでキャラメルらしくなり、一般的な住宅の床とは異なる雰囲気を出せました。
ポイント3 金太郎飴の絵柄をあえて崩す
当初は金太郎飴の絵柄が左右対称になるように、きれいに描いていたのですが、そうすると“ただの模様”に見えてしまい、飴の絵柄っぽさがなくなってしまいました。ここは主人公の女の子の背景にあたる部分なので、よりこだわって描き込みたいところ。
そこで資料写真をよくよく観察してみると、金太郎飴の絵柄は形が崩れていることに気がつきました。なので、ひとつずつ、あえて絵柄を崩したものに描き直しました。
実際の金太郎飴の絵柄は、色とりどりの棒飴が組み合わさることでできるもの。そうしたつくり方が独特の質感を生み出していると思うので、それを表現するために絵柄に縁取りを加えてみました。この縁取りのおかげで、イラストがやっと金太郎飴らしくなりました。
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TAOさんのイラストが表紙の「建築知識」2024年8月号は、本日7月20日(土)より発売。ぜひ書店やエクスナレッジストアで詳細をチェックしてみてください!
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TAO(たお)
2020年1月よりフリーランスのイラストレーターとして活動を開始。広告ポスターやwebサイトのメインビジュアルなどで、主に女の子と日常的な背景のイラストをデジタルで制作している。繊密な描き込みが得意。著書に『「ごちゃごちゃ」した絵の描き方 好きなものを好きなだけ詰め込んだ密度の高いイラスト』(翔泳社)がある。