フカンの構図からパースを読み解く
みなさん、こんにちは。
アシスタント背景美塾のMAEDAXです!
早速ですが、こちらの教室のカットをご覧ください。
このイラストは「フカン(俯瞰)」の構図で描かれています。
フカンっていうのは、上から見下ろすようなアングルのことですね。
今回は、このフカンのイラストには、どんなパースが付いているのか一緒に見ていきましょう。
写真を使って「3点透視」を導き出そう
まずはパースの考え方を写真で説明しようと思います。
この写真、先ほどの教室のイラストと同じフカンの構図です。
写真を見ると、机やカッターマットの角度が右側に向かって斜めにずーっと続いていますね。
左側も線が斜めに収束しています。
左側は、斜めの線が画面内で収束して、ぶつかっていまね。
この線がぶつかる点が、あの「消失点(VP)」というやつです。
この画面では見えていませんが、右側の線の延長にも消失点はあります。
そして、この左右2つの消失点が置かれている水平のラインが「アイレベル」です。
謎多き「アイレベル」の正体は、横から見ればわかる
アイレベルについて少し詳しく説明します。
この写真がどのように撮影されたかを見みれば、アイレベルがわかりやすくなります。
それがこの写真。
MAEDAXが机のミニチュアを撮影しているときの様子です。
なんか怪しい感じではありますけども……
横から見ると、ここがカメラの高さだとわかりますね。
そして少し強引ですが、机1つ分の高さで測ると、下からだいたい机4つ分の高さにカメラのレンズがあることになります。
実は、この机の高さとアイレベルの関係は、こちらのフカンの写真にも、当てはめることができるんです!
垂直方向のパースがイラストのリアリティを高める
さあ、引き続きパースを出していきましょう。
先程の2方向に加えて、フカンの構図は下向きにもパースが付いていきます。
正面から見たときは垂直の線は、平行に走りますが、上から見下ろす視点になると、下に向かってパースがつきます。
もちろんこの線の先にも消失点があります。
フカンは、このように3つ消失点をとる構図なので「3点透視」と呼ばれます。
下向きのパースがつかない構図を「2点透視」と言いますが、こういう下向きのパースのついた3点透視にすることで、よりリアリティのある絵に仕上げることができるのです。
垂直方向のパースは、緩くても、効く!
これが分かれば、さっきの教室のイラストにもパースが出せます。
先程と同じです。
右にも左にも消失点があります。
さらに下向きのパースも付いています。
「え?この線って垂直じゃないの?」って思うかもしれませんが、よく見ると下向きのパースが緩くついていますよ。
パースの調整もイラストの大切な演出要素
3点透視は、パースのつけ方を変えることで絵の印象を変えることもできます。
こちらは、職員室の下書きですが、教室のイラストに比べると、パースの角度が少し急になっているのが分かると思います。
このようにパースを強く効かせることで、広角気味のかっこよくて迫力のある絵に仕上がります。
「あー、ワタシも3点透視をこういう感じで描いてみたいわね」と思われた方、いらっしゃるのではないでしょうか?
アレンジパース! 3点透視っぽく見えるけど消失点は2つ?
次は、フカンのバリエーションになります。
このイラスト「さっきのに比べて、なんか斜めじゃないよね」って感じですよね。
もしかしたら、この構図をパッと見て「1点透視なんじゃないの?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
「1点透視」というのは、横(水平)のラインは平行で、正面(奥)に向かってパースがついているっていうこんな構図ですよね。
確かにこのイラストは、1つの消失点で描かれているように見えますが、実はこれ、下向きにパースがついています。
このように正面から1点透視でパースをつけているようなイラストでも、下向きにパースを取ることができます。
そうすると一点透視の構図にフカンのリアリティをプラスすることができるわけです。
こういうのもパースのバリエーションとして知っておくと、表現の幅が広がりますよ。
これはこれで味のある面白い構図ですよね♡
『クリスタ』で3点透視イラストを実演
最後に『CLIP STUDIO』の機能を使った3点透視の出し方を実演してみたいと思います。
これは、体育館のラフです。
ラフなので下書きの前段階。
なんとなくのイメージですね。
この構図のパースを出してみましょう。
教室のイラストと同じように「こんな感じのパースになるんだろうな」って、パースをつけていきます。
で、「パース定規」の機能を使って、さっき自分が描いたラインにパースを当てはめてみましょう。
このイラストのアイレベルはとても高いです。
こういう視点の画を写真で撮影することはできませんよね。
右向きのパースのガイドラインを合わせます。
次に左のパース。
最後に下向きのパースも合わせれば、3点透視のパースが取れました!
そしてこのパースを基に描き進めていって、完成したのがこちらのイラストになります。
こういう構図のイラストが、どんなパース感で描かれているのか、なんとなくわかっていただけたのでは、ないでしょうか?
もちろん、慣れは必要なんですけども、あんまり難しく考えすぎず「あーこういうパースっていいよね!」って楽しみながら、構図のアイデアを膨らませていただければと思っています。
下のリンクに「3点透視の教室」と「3点透視っぽい理科室」のイラストのデータを置いておきますので、気になる方は参考資料として活用してみてください!!!
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第3回へ、つづく(Coming soon)
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『MAEDAXの学校萌え』
MAEDAX 著
128ページ
B5版
定価2,000円
MAEDAX
鹿児島県出身。福岡の短大を卒業後、瀬口たかひろのアシスタントとして2 年半活動。週刊漫画連載のチーフアシスタントなどを勤め、15 年に渡り実績を詰む。兄弟子にあたる畑健二郎は「プロのアシスタントとしては恐ろしく有能で、もの凄い技術の持ち主」と評する。同名義で声優名鑑に載るなど、多方面に活躍し、漫画家アシスタントとして日本で一番の知名度を誇る。独立後、フリーのアシスタントを経て2013年11月に『アシスタント背景美塾』を立ち上げる。著書に『MAEDAXの背景萌え!』(一迅社)、 『即戦力の漫画背景』(幻冬舎コミックス)がある。
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