【実務&業界研究に!】未来の建築のカギを握る、構造デザインの仕事が分かる本

発売1ヶ月で重版出来!建築の仕事のなかでも固く捉えられがちな「構造デザイン」の実際の仕事を具体的なビジュアルですらすら学べる、ありそうでなかったアプローチの専門書です。著者は業界でも有数の構造設計専門チームを有する日建設計。建築構造の実務に携わる方にはもちろんのこと、就職活動の業界研究などにもおすすめの『世界で一番おもしろい構造デザイン』をご紹介します!

構造設計・構造デザインとは?

「構造設計は世界で一番面白い仕事だ。」20年ほど前に引退された先輩の口癖だと私の先輩から聞いたことがあります。また、「君はこの仕事に就けて本当に良かったね。だってこの世の中で一番面白い仕事だからね。」と入社当時の先輩に話しかけられたという者もいます。
 —「はじめに」より引用

構造設計の主な仕事は、簡単に言えば柱・梁などの骨格を考え、計算で検証し、意匠・コスト・施工・設備などさまざまな面を考慮した”適切な”計画に落とし込んでいくことです。

その存在は表舞台に表れにくく、パソコンにむかってカタカタ計算しているだけ…と思っている人も少なくないかもしれません。ですが実態は、基礎の杭から軒の先端まで、建築を形づくる物体そのものにとことん向き合う仕事だといえます。

本書は、そんな泥臭くもあたたかい「構造デザイン」のリアルな姿をご紹介する1冊。当事者たちが「世界で一番おもしろい仕事だ」と自負するワケを知ることができます。

 

アイディアが実際のモノになるまでのプロセスを追う

1階は学生が行き交う開放的な空間、2階は遮音性の高いレッスン室が求められた音楽系大学のキャンパス。1階と2階の平面計画を整理して、柱の本数の最小化を図った

Chapter1では、日建設計がこれまでに手掛けたプロジェクトのなかから、構造デザインの仕事が際立つ26件を紹介。クライアント、土地、使い方などの課題を整理して、適切な構造計画をつくるためにどんなアイディアが必要か?そしてそれを実際のモノに実現するために、どんな工夫や試行錯誤を行ったか?というプロセスを、設計者本人の書き下ろしで解説します。

「細くすっきりした柱にする」構造デザインのポイントが理解できた次のステップでは、「細くすっきりした意匠を実現する」ための試行錯誤や施工の工夫に迫る

スケッチや模型、図面、モデル図など豊富なビジュアルを伴い、図版を追うだけでもデザインのポイントが直感的に分かるつくり。専門用語は解説付きで、初学者は実際の仕事での活用方法に照らしながら知識をつけられます
規格製材を組み合わせて大スパンを架ける、構造と外装を兼ねる、ディテールにこだわって見た目にも構造的にもスマートな空間をつくる など、中小建築物にも活用可能な、構造のアイディアが満載!

イラストは、同じく日建設計の内部でビジュアライズを専門に担う[日建設計イラストレーションスタジオ]の描き下ろし。構造デザインによって、建築の課題をどう解決したか?どう変わったか?をbefore/afterで表現しています。

バラバラな形のレッスン室を支える時、それぞれの教室の下に柱を下ろすと柱が多く、1階は狭くなる。この建物では鉛直荷重を柱に、地震力は耐力癖にと負担役割を分けることで構造体を最小限にできた

 

実務につながる基礎知識を分かりやすく

Chapter2では、構造設計の今を知るために押さえておきたい基礎知識をQ&A方式で解説。

木・コンクリート・鉄骨の素材の特徴・扱い方の違いや、構造で避けては通れない地震の解析、耐震・免震・制振の違いといった基礎の基礎だけでなく、BIMなど設計で使われる技術や、建築を分析するための最新技術、近年注目が集まっているたてのり問題など幅広く扱っています。
教科書で用語の理解はできるけど、実際どんな風に実務につながっているの?という疑問を解消し、より実践的に理解を深められます。

こちらも、イラストはすべて日建設計イラストレーションスタジオによるもの。専門家との密なコミュニケーションのもとで製作された分かりやすいイラストが理解を助けます。

建築の未来を考える特別コンテンツ

構造設計を学ぶ本編だけでなく、さまざまなアプローチで建築構造の過去と未来を考えるコンテンツも収録。

「構造設計と技術の歴史年表」では、1950~2020年にかけての構造技術の隆盛や技術どうしのつながりなどを年表として視覚化。
構造デザインの流行や試行錯誤の積み重ね、社会的な時流との関係性を読み取れる奥が深い資料です。

特別対談では、日建設計の意匠部門を代表するデザイナー山梨知彦氏・大谷弘明氏の両名と構造設計チームが、建築設計の過去と未来について語ります。

構造設計がすぐれている名建築といえば?
構造と意匠の関係性とは?
意匠設計者から見た構造設計の魅力とは?
これからの構造設計者に求められる能力とは?

など、これからの建築に携わる方は必見のアドバイスや、ここでしか聞けないエピソードが満載!

また巻末の隠れた見どころとして、本書に登場する設計者の「構造設計を志したきっかけ」を掲載。難しそうな仕事に見えて意外ときっかけはささいなものだったり、親近感を感じられるものだったりと、一見の価値ありです。

ものづくりに携わるすべての方に!

幻となったZHA案新国立競技場、ホキ美術館、新宿住友ビル、名古屋市科学館など、建築好きなら一度は目にしたことのある建築も多数登場!
課題を整理し、制約を考慮しながら、デザインの力でどう解決するか?というプロセスは、建築に限らずどんなジャンルにも通じる、ものづくりの現場の楽しさをやりがいを感じ取ることができます。

現役設計者だからこそ知っている、最新技術や現場のようすも分かる盛りだくさんの1冊。
意匠・構造にかかわらず実務者の方には、実践的なデザインの参考書としてもおすすめです。

また特に構造設計の仕事を視野に入れている学生の方にとっては、教科書の知識が現場にどうつながるのか、実際のモノと紐づいた解説で学ぶことで、専門用語や概念も理解しやすくなること請け合い。
働くイメージを具体的にして、どんな仕事をしてみたいと考えるか、自己分析や業界研究の足がかりとしてお役立てください。

『世界で一番おもしろい構造デザイン』カバーイラスト

日建設計のイラスト専門チームが描き下ろした、名古屋市科学館のイラストが目印

『世界で一番おもしろい構造デザイン』
定価 2,800円+税
著者名 日建設計 構造設計グループ
ページ数 192
判型 B5判
発行年月日 2024/12/03
ISBN 9784767832524

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