【睦モクヨンビル】JAS製材でつくる木造4階の建築―松本隆之—

日本初のJAS製材を用いた木造4階建てビル「睦モクヨンビル」。木のよさを最大限に生かす意匠計画と合理的な構造計画の絶妙なバランスで誕生した建物です。今後の普及が期待される中層木造建築において、設計の道しるべになるでしょう。

接合部 管柱と床梁をつなぐ製作金物と既製品金物の取合い

180㎜角の大断面柱と床梁の取合い。柱頭部分のベースプレートと柱側面のドリフトピンが露出しているのみで、金物の大部分は隠蔽されている。一方、天井や壁を仕上げていないので、設備配管(空調・電気)は露出している

150㎜角や180㎜角などの柱は、土台を敷かずに基礎と直接接合させている。9㎜厚の制作金物を柱に差し込み、アンカーボルトで基礎と緊結。金物本体はほとんど見えない

製作金物を取り付けた後の様子。上下の柱(スギ)と梁(ベイマツ)を一体化する9㎜厚の製作金物が埋め込まれている

梁勝ちの場合

柱勝ちの場合

 

階段 CLTでつくる無骨な木の階段

90㎜厚(3層3プライ)のスギCLT(製造はサイプレス・スナダヤ)による造作の階段。プレカットされた壁柱、段板、ささら桁を現場で組み立てた。ささら桁から跳ね出した分厚い段板が木の力強さを表現している

段板との取合いがプレカットされたCLTの壁柱を上からクレーンで落とし込んで、基礎に埋め込んだXマーク金物と接合している様子

ささら桁(下部)を×マーク金物に落とし込んでいる様子。設置後は、M16ボルトを用いて金物との接合を行う

段板はささら桁(下部)に落とし込んだ後に、ささら桁(上部)を段板に落とし込む。接合金物は使用していない

内外装 引き締まった外観と木材を多用した内観

外壁には「SOLIDO typeM_LAP」の“鉄黒”を採用。夕暮れ時には、その黒く引き締まった色合いが強調され、中に透けて見える木材の素朴な色合いとも相まって、退廃的な美しさを感じる

構造材や造作材、化粧材など、多種多様な木材を内装に生かしたのも大きな特徴。中央の大開口越しにも、木の温もりが伝わってくる

 

NOTE 「睦モクヨンビル」で採用された製品

構造

機械等級区分構造用製材 

  土台:宮崎県産ヒノキ120(□ E90)/都城木材
  柱:宮崎県産スギ120□・150(□ E50)/都城木材
   :福島県産スギ180(□ E50)/協同組合いわき材加工センター
  横架材:ベイマツ120×150~300(E110)/中国木材

CLT(Cross Laminated Timber) スギ㋐90(3層3プライ)/サイプレス・スナダヤ

構造金物 プレセッターSU/BXカネシン

     HPB-46/タツミ

 

外部

越屋根(ガルバリウム鋼板) ニクスカラーPro GH ブラック/日鉄鋼板

陸屋根(ウレタン塗膜防水) オルタックエース/田島ルーフィング

外壁(窯業系サイディング) SOLIDO typeM_LAP鉄黒/ケイミュー

開口部/1階(長崎県産スギ仕様木製建具) 製作/稗田木工所 

木質カーテンウォール アコヤ/池上産業

開口部/2階~4階(アルミ樹脂複合サッシ) エピソードⅡ NEO/YKK AP

 

内部

内部造作材 スギ(長崎県産材)

木部塗装(柿渋塗装仕上げ) 無臭柿渋/ターナー色彩

 

「睦モクヨンビル」は受賞歴多数

令和5年度木材利用優良施設等コンクール 審査委員会特別賞 
令和5年度全国木造プレカット協会賞 入賞
ウッドデザイン賞2023 入賞
令和5年度建築九州賞 入賞
令和5年度木の建築賞 入賞
第27回木材活用コンクール 最優秀賞農林水産大臣賞+木質開拓賞 W受賞
2024年度 ながさき建築賞 大賞受賞
令和6年度 日事連建築賞 優秀賞
2024年度 JIA日本建築大賞現地審査進出 優秀建築賞100選

 

取材協力:松本隆之[まつもと・たかゆき]

長崎県壱岐市で設計事務所(睦設計コンサルタント)を運営。住宅・非住宅問わず、数多くの木造建築を設計しており、木造2階建て商業施設「壱岐チャリサービスステーション」(その他の建築物)は「長崎建築賞奨励賞」、木造2階建て高齢者福祉施設「特別養護老人ホーム壱岐のこころ」(準耐火建築物)は「長崎県福祉のまちづくり賞」、木造平屋の葬祭施設「壱岐葬斎場~ひなたの丘~」(準耐火建築物)は「長崎建築賞奨励賞」を受賞。いずれも、製材を使った木の構造を見せるデザインを特徴としている

 

施工=山内組

竣工写真=嶋井紀博

 

【設計者・施工者の皆様へ】エクスナレッジ・オンライン掲載・設計事例大募集!