屋根 継目のない21m の鋼板横葺き!
「越屋根の家」はガルバリウム鋼板の横葺き屋根。一般的な横葺き屋根とは異なり、継目が1カ所もなく、長さ21mもの長尺を1枚もので葺いています。建物正面から屋根を見上げると、垂直線が一切なく、いくつもの水平線が重なることで重心が低く抑えられ、水平方向に広がる建物の個性が際立っています。
屋根工事は、鋼板屋根の施工を数多く手がけている新井勇司氏(新井建築板金)が担当。現場に成形機を持ち込んで、ロール状のガルバリウム鋼板を1枚1枚、21mの長さにカット。それをこの住宅の関係者が取り付けるというイベントにもなりました。「これまでは最長14.7mでしたが、皆さんの協力で21mという“最長 不倒距離”を実現しました(笑)」(関本氏+新井氏)。

屋根材には「耐摩カラーSGL 耐摩いぶし銀」(日鉄鋼板)を採用。「マグネシウムの防錆効果が付与されたガルバリウム鋼板なので、耐久性が高いだけでなく、他社のいわゆる“ギングロ”と比較しても濃く、深みのある色が特徴です。“ギングロ”は光が反射すると、かなり白っぽく見えがちですが、『耐摩いぶし銀』は建替え前の母屋の瓦や隣に立つ土蔵の瓦のイメージにもよく調和しま す」(関本氏)

「屋根を長尺(目安として10m以上)にする場合、伸縮が問題となるのですが、少し働き幅にゆるみをとっております。ぴったり奥まで押し込むと190㎜の働きになるのですが、ここでは、伸縮を考慮して185㎜としています」(新井氏)
間取り 土間を室内化した吹抜けのある大きなLDK
「越屋根の家」の間取り。ダイニング・キッチンと広間を挟んで親世帯の居室(左)、水廻り・子世帯の居室(右)を配置。キッチン・パントリー、薪ストーブのスペースなどは床の高さが400㎜下がっており、室内化された土間となっています。

広間から土間越しに中庭を見る。中庭の奥には木塀(スギ)が設置されており、背後にあるお墓との緩やかな境界となっている。手前に見えるローテーブルは家具製作。天板(ナラ+シナ積層合板)と脚が着脱可能になっている(製作は藤沢木工所)
TOPICS リオタデザインと藤沢木工所が共同開発したスツール「muni」
2024年に発売が開始されたオリジナルのスツール。名前は「muni(ムニ)」で、唯一無二が由来となっています。その名の通り、「座面」と「脚」と「布(張り地)」の組み合わせで、スツールのデザインを自由にカスタマイズすることが可能。ご興味のある方は、こちらをご覧ください。[写真=平林克己]

浴室はハーフユニットバス「ハーフバス08 タイプ0 1.25坪サイズ」(TOTO)として内部の天井や壁面を木質化したほか、洗面室の天井や腰壁を羽目板張りとして、水廻りも木の温かみが感じられる空間になっている
NOTE 「越屋根の家」で採用された製品
外部
屋根(ガルバリウム鋼板) 耐摩カラーSGL 耐摩いぶし銀/日鉄鋼板
外壁(吹付け仕上げ材) マヂックコート パターンH8K・特注色/フッコ―
外壁(木材保護塗料) ウッドロングエコ/小川耕太郎∞百合子社
外壁(木材保護塗料) キシラデコール/大阪ガスケミカル
★参考記事:【PR】屋根とフラットに納まる太陽光発電 ―「エコテクノルーフ」—
断熱
屋根(ポリイソシアヌレートフォーム) サーマックスRW/イノアック コーポレーション
外壁(高性能グラスウール)
基礎(押出法ポリスチレンフォーム3種bA) スタイロエース-Ⅱ/デュポン・スタイロ
内部
壁(スギ羽目板) 小幅板風羽目板/野地木材工業
壁(ベイツガ柾目 本実ラフソーン仕上げ・鋸目なし) つくるシリーズ/共栄木材
壁(塗装風壁紙) エコフリース/ナガイ
床(無垢フローリング) 広巾オーク(W189×L1,820×t15 ㎜)/ハレトケ
土間床(磁器質タイル) Quartz QTZ-3060D-9T/平田タイル
取材協力:関本竜太[せきもと・りょうた]

1971年埼玉県生まれ。’94年日本大学理工学部建築学科卒業。’94~99年エーディーネットワーク建築研究所。2000~’01年フィンランドヘルシンキ工科大学(現アールト大学)留学、現地の設計事務所でプロジェクトにかかわる。’02年リオタデザイン設立。主著に『上質に暮らす おもてなし住宅のつくり方』『詳細図解 木造住宅のできるまで』『すごい建築士になる!』(いずれもエクスナレッジ)
関本竜太氏の著書・主な掲載書籍はこちら
上質に暮らす おもてなし住宅のつくり方
詳細図解 木造住宅のできるまで
すごい建築士になる!
建築を整える。Archi Design by Panasonic
施工=堀尾建設
施工写真=平林克己
竣工写真=水谷綾子
【設計者・施工者の皆様へ】エクスナレッジ・オンライン掲載・設計事例大募集!