【魅せられる】美しいインクルージョンの鉱物図鑑

インクルージョンとは、鉱物や宝石内部に包有された液体や異種鉱物などの包有物のこと。これらは一般的にはクラック(傷)などと同様の扱いでしたが、個性的な美しさやユニークさによって、近年、人気を集めています。思わず魅せられる、まるで石の内部にもう一つの世界があるようなインクルージョンの世界を覗いてみましょう。

インクルージョンの鉱物

インクルージョンのふしぎを語るなら、“デンドライト(樹枝状結晶)”

植物の化石のように見えることから、ギリシャ語で「樹」を意味する言葉から名付けられた「デンドライト」。樹枝状の形をした結晶は、シダ植物の忍草のように見えることから、日本では忍石(しのぶいし)などと呼ばれてきました。樹枝状の形は結晶の割れ目から入り込んだ二酸化マンガン鉱などが急激に成長することでできたものです。岩石の節理面にもこうした結晶が見られますが、街の中の建築物の柱や床に使われた石などで目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。

デンドライト

黒い結晶のほか、主に褐鉄鉱による赤い結晶もある。デンドライトによって生まれる模様の中には、まるで風景画のように見えるものもある。

方解石(カルサイト)とルチル(金紅石)のコラボレーション

思わずギョッとする、方解石とそれを貫くかのようなルチルが包有された水晶。方解石らしい菱面体の結晶は、ルチルによって串刺しにされ、空中にぴたりと留まっているように見えます、。実は結晶ができた順序は逆になります。先に、ルチルの針状結晶ができ、それを取り囲むように方解石の結晶ができました。ルチルが他の鉱物を貫いているような形状はこの他にも見られ、串とお肉のような見た目から「バーベキュー」と呼ばれているものも本書で紹介しています。

カルサイト・イン・ルチルクォーツ

主結晶である水晶の透明度が高いため、内部の包有物が非常にクリアに見える。いろいろな角度から見るのもたのしい。

新種の鉱物、ギラライトの”くらげ”のような結晶に癒される

2004年にブラジルで発見された新しい鉱物、ギラライト。そうした新種の鉱物もインクルージョンとして含まれています。インクルージョンであれば、微細な結晶も転がしながらじっくりと眺めることができます。写真のまるでくらげのような形のものは、「メデューサ・クォーツ」と呼ばれており、海の中の景色を見ているような気分になります。

ギラライト・イン・クォーツ

ぷかぷかと浮かぶ、くらげのような「ギラライト・イン・クォーツ」。さわやかな水色は見ているだけで胸がすくようです。

雪のように、あるいは星屑のように瞬く 石の中の情景

インクルージョンの石では内部の結晶の形をたのしむ以外に、包有物が放つちいさな輝きを堪能するのもおすすめです。内部に包有された液体やちいさな結晶がきらきらと光を反射するとき、それは舞い降りる雪の結晶の輝きや、星屑のように見え、美しい情景が広がります。結晶の中に閉じ込められていると、空気に触れると酸化してしまう結晶でも酸化することがないため、いつまでも美しい輝きを放ちます。

ライモナイト・イン・アクアマリン

マーカサイト・イン・クォーツ

ほのかな雪明りのように瞬く、ライモナイト・イン・アクアマリン(上)。 舞い落ちる銀の薄片が結晶内部でぴたりと動きを止めている、マーカサイト・イン・クォーツ。

猫の目のようにキラリと光る、美しい”キャッツ・アイ”

”キャッツ・アイ”という宝石を知っていますか?代表的なのはクリソベリルに見られるキャッツ・アイですが、猫の目のような縦の光を放つため人気がある石です。この縦の光は、実はインクルージョンによって引き起こされます。石の内部に一方向に揃った針やチューブ状の包有物を含む石をドーム状に磨くと90度の方向に光が反射します。包有物は、ユニークなだけではありません。ときには光彩効果を生み出し、それによって付加価値がつくものもあるのです。

トルマリン・キャッツアイ

一方向に並んだチューブ状のインクルージョンによって縦の光を放つ、トルマリン・キャッツアイ。本に掲載した石は、チューブが大きいため肉眼でも確認できる。

 

本書では、この他にもさまざまなインクルージョンの石を全部で65点紹介しています。めくるめく、鉱物の内部世界へと浸ってみてはいかがでしょう。

 

美しいインクルージョンの鉱物図鑑

定価 1,600円+税  著者名 atelier Ruchi  ページ数 176  判型 A5判  発行年月日 2022/10/03 ISBN 9784767830421

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美しい共生鉱物の図鑑

 

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