本屋を営むことは、物語を生きること。
「本屋をひらく」という響きには、どこか特別なものがある。
棚に並ぶ本、店に流れる時間、人が本を通じて言葉を交わす場所。
けれど、その営みがどんな日々の積み重ねで成り立っているのかは、意外と知られていない。

『ぼくの本屋ができるまで』は、そんな「書店ができるまで」の裏側を、物語としてそっと覗かせてくれる書店小説だ。
主人公・三角詠太郎(みすみ・えいたろう)は、地元の商店街に戻り、祖父が遺した、かつて本屋だった空き店舗を前に立つ。
そして静かに、ある決意を口にする。
「地元で本屋、やることにします」。
棚づくり、仕入れ、販売方法。著者との邂逅や、書店員たちの交流、日々の売れ行きを見ながらの判断。
本書では、そうした本屋の日常が、リアルな手触りをもって描かれていく。
書店の現場を知るからこそ描ける、本屋の裏側
この物語を支えるのは、著者自身が元書店員であるという視点だ。
現場を知るからこそ描ける、棚の配置に悩む時間や、一冊の本をどう手渡すかを考える感覚が、物語の随所に息づいている。
著者コメント
「二十歳の頃に、近所の本屋に入り浸りすぎていたら「もうバイトしない?」とスカウトされてしまって以来、ずっと本屋で働いてきて、こんなふうに本屋の小説を書くことになるとは。あまりに当たり前すぎて、書こうという発想がなかったです」

また、書店や出版に関する専門用語には解説も収録されており、物語を楽しみながら、「本がどうやって棚に並び、読者のもとへ届くのか」という仕組みも自然と理解できる構成になっている。
本書は本屋という場所を愛し、そこで過ごす時間を大切にする人たちへ向けた一冊だ。
本が好きな人へ。そして、本屋さんを愛するすべての人へ。
| 定価 | 1,700円+税 |
|---|---|
| 著者名 | キタハラ |
| ページ数 | 280 |
| 判型 | 四六 |
| 発行年月日 | 2025/12/24 |
| ISBN | 9784767835143 |
















