ヴォイド

【モデルハウス 左_右】住み、働き、地域とつながる空間 ― 中本尋之 ―

店舗デザインを手掛けるFATHOMは、クライアントの想いを深く掘り下げ、空間デザインに表現してきました。そこで培ったデザイン手法と空間を体験できる場が、モデルハウス 左_右(さゆう)です。店舗の空間デザインをベースに街と関わり、住宅リノベーションも手掛けるFATHOMが提唱する新たなライフスタイル――住むこと・働くこと・地域と関わることのシームレスなつながりが、左_右に体現されています。

LDK 窓 庭

LDKからRCヴォイド、奥の個室棟を見る。RCヴォイドは、「たんなる通路でも中庭でもなく、内と外、個と共、静と動といった対立軸を緩やかに融解させる余白の場」(中本氏)

 

広島県呉市の住宅街、坂道に沿って高低差がある敷地に、増改築を繰り返してきた築70年の木造平屋と2階建ての納屋がありました。今回探訪するのは、この建物を改修してできた住宅です。

平屋は個室棟とLDK棟に分けられ、その間に、中庭とエントランスをつなぐようにRCヴォイドが差し込まれています。「たんなる機能的分離ではなく、“個”の時間と“共”の時間が連続的に展開します」と、設計者の中本氏は話します。

外壁面は道路からの視線や強い西日を避けるために閉ざし、漆喰で一様に仕上げました。重厚な既存瓦の軒先に鏡面ステンレスの雨樋を通し、エッジを効かせて水平を美しく強調しています。LDK棟には低い位置に水平方向を強調したFIX窓を、個室棟には壁と一体化する開き雨戸を1つずつ設えました。開き雨戸は開口面積や視線の抜け方を調整でき、光と影の密度を日ごとに変化させます。漆喰壁の平滑な面に斜めの開口が微妙な陰影を生み出し、日々の繊細な変化を与えるのです。

ファサード

建物左のLDK棟と右の個室棟の間に差し込まれたRCヴォイド

平屋の左側にあった既存の納屋は解体し、敷地の形状に合わせた三角平面のRC造半地下+S造2階建てのコミュニティ棟を増築しました。コミュニティ棟は、家族の拠点である住まいを人と人、人と場がつながる外の世界へと広げる役割を担います。

ファサード

増築したコミュニティ棟。半地下階はレセプション、2階・3階はコミュニティスペースとして地域に開放

レセプション

内部にはレセプションテーブルや壁を掘り込んでつくったベンチがある。レセプションは訪れる人を建築要素全体で迎え入れる“はじまりの場”となっている

個室棟、LDK棟、RCヴォイド、そして増築されたコミュニティ棟がそれぞれ自立しながらも、光・風・動線によって有機的につながっています。

 

間取り RCヴォイドで区切ると同時につながる、新しいライフスタイル

間取り

ファサードは閉じた一方、住宅の中に入ると、内庭に向かって開口が広がる。風に揺れる植栽や太陽の動きなど、自然の動きを感じられる。また、各棟の間には可動間仕切が設けられ、用途や季節に応じて住まい方を自在に変えられる

水廻り 庭

玄関から中庭を見る。フレームレスで設けた2つの天窓と中庭への大きな開口が、内部に柔らかな拡散光を導き、木造空間の中に異質として存在する打ち放しコンクリートに投影される

コミュニティスペース

コミュニティースペース

コミュニティ棟の2階[写真上]・3階[写真下]。1階のレセプションと構造・設えを変え、バラエティ豊かな空間を体感できるようにした