「セット」で残っているのは、実は奇跡
――今回の特集、法隆寺や平等院など、超有名なお寺の断面パースが圧巻ですね。
担当: 実はここ、一番の悩みどころだったんです。仏像とお寺って、実はつくられたタイミングが数百年ズレていることも多くて。同時期につくられていても、災害や戦争で無くなっていたり・・・どちらをつくるのも莫大なお金と人手がかかるので、同時期に完成させるのは至難の業なんです。
――そうか、どちらも国家予算級の巨大プロジェクトですもんね。
担当: そうなんです。だからこそ今回は、建物と仏像が「最強のセット」で残っているお寺を超厳選させていただきました。ただ、そのぶん先生方やお寺への確認作業も膨大で……。年末年始のお忙しい時期だったのですが、諸先生方やお寺の皆様が本当に手厚くご協力くださったおかげで形になりました。この場を借りて、改めて感謝を伝えたいです!
予定になかった「仏像カタログ」の爆誕と暴走
――仏像の見分け方のページも、キャラ名鑑みたいで読みやすいです。
担当: 実はあの「仏像カタログ」、当初の台割(雑誌の設計図)にはなかったんですよ。
――えっ、そうなんですか?
担当: 作っているうちに、「多様な仏様をビジュアルで見せたほうが、読者は絶対うれしいはず!」と勝手に妄想の読者の気持ちに寄り添った結果でした。さらに勢い余って台割上のページ数を勝手に増やしてしまうという事件も発生したり・・・
――ページ数をいつのまにか……!?
担当: ちょっとゾーン(?)に入ってたのかもしれません。密教では、宇宙の根本である「大日如来」が、相手に合わせて姿を変える(化身)と考えます。その変身バリエーションをどうしても網羅したかったんです。悟りを開いた「如来」は衣一枚のミニマリスト、人々を救う「菩薩」は王子様時代の釈迦をモデルにした重装備……。このディテールの差こそが、仏様の「役割」を示す要素なんですよ。

全61尊すべて描きおろし。見つめすぎて、最後は仏様と目が合いました
編集部で繰り返された「地獄の校正」
――「仏像×寺院」の関係性を見せるために、かなりの工夫をされたとか?
担当: もう、何度校正をかけたか分かりません。単に建物の横に仏像を並べるだけじゃダメなんです。「なぜこの空間に、この仏像がこの向きで立っているのか」という必然性を視覚化するために、編集部内で試行錯誤を重ね、何度も誌面をブラッシュアップしていきました。

深淵を覗き込むとき・・・またお前も深淵に覗き込まれているのだ・・・
結局、仏教のことはよくわかったのか?
――これだけ濃い特集を作られて、仏教の深淵に触れた気分では?
担当: ……「わかりません」。
――えっ?
担当: 取材すればするほど、図面を引けば引くほど、その奥深さに圧倒されるばかりで。正直、まだ入り口に立っただけという気分です。でも、だからこそ面白い! その「底知れなさ」をそのまま誌面に詰め込みました。
――仏像と寺院。組み合わせるには、あまりに険しい道のりだったんですね・・・
担当: 本当に。専門家の先生方から容赦ない知見が飛んできて、それに応えようとページを勝手に増やしたり修正したりと、年末年始を返上して作業してきました。でも、どれだけ紙面に情報を詰め込んでも、仏教という巨大なブラックホールに吸い込まれていくような感覚で……。最終的に雑誌は完成しましたが、私の精神はまだ戻ってこれていません。

「アカン、戻れへん」仏教世界の深淵に吸い込まれていく編集担当たち(イメージ図)
「仏教の宇宙を解剖する」という壮大な野望を抱き、暴走の限りを尽くした今回の特集。
しかし、数千年の歴史を持つ仏教の深淵を前に、担当編集がたどり着いた最終的な答えは「何もわかりません」という、清々しいまでの敗北宣言でした。
結果として、この年末年始で得た唯一の真理は、『人間は、煩悩のままにページ数を増やしてはいけない』という極めて現世的な教訓だけだったようです。
担当者の魂と引き換えに爆誕した「仏像と寺院建築大全」。
皆さんも、この1,800円(+税)の狂気を手に取って、彼が帰ってこれなくなった深淵を一緒に覗いてみてはいかがでしょうか。
私は怖くて、まだ1ページ目しか開けていません。
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定価:1,800円+税
B5判/146ページ












