暮らしに彩りをもたらす窓
「赤塚の家」[※]は、1・2階ともに溜まりとなる3つのスペースが分散し、それを移動空間でつなぐゾーニングが大きな特徴です。これは住宅密集地という敷地条件から導き出された答えです。ワンルームとしたLDKの南側に大きな窓を設けるのではなく、ダイニング・キッチンとリビングの領域を緩やかに分け、それぞれの場所に最適な窓を設けることで、落ち着きのある空間に。窓は家具のレイアウトにも配慮して配置しています。
❶「赤塚の家」のリビング、廊下、ダイニング・キッチン。それぞれに家具やキッチンなどのレイアウトに合わせて、高性能窓「TW」が取り付けられている。従来品樹脂窓よりも、ガラス面積を30%拡大した分、枠廻りの見付け寸法も小さくなり、枠廻りがすっきりとしている。もちろん、断熱性能も高い
➋道路側にせり出している居室部分が建物の外観に個性的な凹凸を生み出す。へこんだ移動空間部分の外壁は、かつてあった祖母の家を思い起こされる青い二丁掛けタイルで仕上げられた
移動空間では、開口を抑えた居室とは異なり、より採光や周辺環境とのつながりに重きを置きました。外壁面は後退させ、窓を大きくし、天窓も設けています。結果としてLDKにはさまざまな方向から光が入り込むので、光と影が適度なバランスで共存する空間になりました。時々刻々と変化する光と影が、日々の生活に豊かな彩りを与えてくれるはずです。
❹リビングの東面は壁際にW280×H2,270㎜の縦すべり出し窓を採用。あえて壁際に寄せることで、壁面をなめるような光の表現が可能に。凹凸感のあるテクスチュアが生み出す陰影が強調される
➎リビングに取り付けられた縦すべり出し窓TF(縦すべり出し窓+FIX窓)。ややグレイッシュな白い内装に合わせて、内観色はプレシャスホワイトPを採用。窓の大きさはW1,350×H1,320㎜。取り付け位置も壁際から少し離したうえで左側に寄せ、道路側立面の見た目を整えている
➏廊下の上に天窓「スカイシアター」(LIXIL)を取 り付けて、モールガラス越しに柔らかい光をLDKに採り込む。天窓の存在は、「TW」越しに前面道路からも感じられる
❼廊下にはW678㎜×H1,950㎜のFIX窓を設けて多くの光を採り込むともに、隣り合う色鮮やかな突き板(マコレ)のテクスチュアを強調している「赤塚の家」では、こうした縦長の窓を随所に設けて景色を切り取っている
このような環境をつくるものとして、窓は黒子であってほしい。そんな思いから「赤塚の家」では「TW」(LIXIL)を採用しました。枠廻りの見付け寸法がとても細く、納まりを工夫せずとも、建築との一体感が得られます。ガラス面積の拡大によって、断熱性能も向上。デザインや性能の両面で、暮らしの質を高められる窓といえるでしょう。 [談]
❽「『TW』の特筆すべき点は網戸。ほかのサッシに比べて網戸を引き込んだ時に、フレームの竪枠内にすっきり納まるので、網戸を開いても閉じても、その存在が気になりません」(古谷野氏)
❾「TW」の外観は6色展開。アルミ本来の色合いであるナチュラルシルバーを採用しているが、塗り壁で仕上げた外壁とのなじみもよい
➓移動空間にある大きな窓には、下枠部分に窓台(ゴム集成材)を取り付けて、収納スペースやベンチとして活用している。「ベンチの先端にテーパーをかけて、見付けを薄くすることで、ほかの開口の窓台とのバランスを整えています」(古谷野氏)
※ 「赤塚の家」ではLow-Eペアガラス(アルゴンガス入り)の「TW」が採用された。外皮平均熱貫流率(UA値)は0.45W/㎡・K。加えて、LIXILと東京電力エナジーパートナーが設立した「LIXIL TEPCO スマートパートナーズ」が提供するサービス「建て得」を利用して、8kWの太陽光発電システムを搭載している。余剰電力売電収入をLIXIL TEPCOスマートパートナーズに供与する代わりに、建築主が購入する太陽光発電システム製品代(建て得バリューは工事費も含む)のローン支払負担が“実質0円”になる
赤塚の家 設計=古谷野裕一/古谷野工務店 写真=鈴木信之介 協賛=LIXIL