CLTパネル工法で低層賃貸住宅をつくる<PR>

ドイツ滞在の経験を背景に、木の“揺らぎ”や経年変化を許容する建築を追求する粕谷淳司氏。離島(東京都利島村)でのCLTパネル工法を用いた低層賃貸住宅「サステナブル集合住宅」(仮称)や、防火地域での木造準耐火建築物「ペリカン倉庫棟」などの実践を通じ、汎用的な材料で木造化&木質化を実現していく姿勢を語ります。

CLTの可能性を突き詰める

伊豆諸島の利島村(東京都)は、川がなく海水を淡水化してようやく生活が成り立つ特別な場所です。そんな環境で建築をどう成立させるのか。こうした課題に対して私たちは、オフグリッドの小型トレーラーハウス「WHOLE EARTH CUBE」(2023年)を用いて、水道インフラに依存せずにどこまで日常生活が可能かという検証を開始しました。運用は想定通りに行われ、次の段階としてより〝定住〞を目指したプロジェクトが始まりました。

具体的には、賃貸住宅「サステナブル集合住宅」(仮称)を整備しようという話になりました。しかし、工場で製作が完結する大型トレーラーハウスなどとは勝手が違います。しかも、利島村には大工がいません。島外から職人を呼ぶにしても、長期間の滞在となり、費用もかさみます。加工を現場に依存せず、現場では極力〝組み立てるだけ〞で成立する工法が必要だと考えました。

答えは必然的に、CLT(Cross Laminated Timber )のパネル工法へと導かれました。CLTはJAS構造材として品質が明確であり、工場で精度よく加工され、大きな面材として現場に届きます。現場での組み立ては在来軸組木造よりも少し時間を要しますが、組み立てが終われば建物の〝外形〞がほぼ完成することになります。離島のように〝時間・人手・運搬〞のすべてが制約される環境では、非常に理にかなった工法だといえるでしょう。

加えて、利島村のような島嶼部では、台風に耐える堅牢性が欠かせません。木造は弱いという印象をもたれがちですが、CLTを分厚い面構造として用いれば、RC造に匹敵する耐風性を確保できます。RC造が重量や施工面で現実的でない場合は、CLTのほうが理にかなっていると考えています。

ただし、CLTパネル工法では、基礎と壁パネルの取合い精度が極めて重要です。在来軸組木造であれば現場で調整できる誤差も、CLTではそのまま影響してしまう。また、室内にCLTを現しとする場合、構造的に必要となる金物の見え方をどう制御するかも課題でした。

一方、CLTが現しになった内部空間は、集合住宅としては珍しく、木材の素朴な力強さが漂う有機的な佇まいを備えています。

 

内装 木質

合板を用いて壁を仕上げた2 階建て戸建住宅「川中島の住宅」。人と建築の距離が近く感じられる。「こうした関係性は、CLT を仕上げとした利島村の賃貸住宅も同様です。ビニルクロスだけで仕上げる一般的な賃貸住宅とは異なり、原状回復を過度に意識することなく、住まい手が自分なりに壁をアレンジしていく。そんな使われ方も提案きるのではないかと考えています」(粕谷氏)

CLT パネル工法

ヒノキCLT(パネル工法)が現しとなった2階建て賃貸住宅「サステナブル集合住宅」の内観。接合面には帯金物が露出することになるが、全体としては木質感に溢れ、人との距離が近い佇まいになっている

 

採用したのはサイプレス・スナダヤ(愛媛県)で加工されたヒノキCLTです。私は合板のもつ端正な雰囲気が好きなのですが、ヒノキはそのニュアンスに近い。CLTでありながら、どこか仕上げ材としてのやさしさが感じられます。軒裏も現しとし、耐候性の高い木材保護塗料を施しています。CLTの量感を外部にまで素直に表しつつ、厳しい風雨に耐えられるようにしています。

こうして振り返ると、CLTは低層の集合住宅と非常に相性がよい。反復性に富み、短工期で、構造的にも合理的。外断熱でも内断熱でも対応しやすく断熱性能も高めやすい。大規模木造が注目されがちですが、CLTの可能性を広げるのは、むしろ中低層の木造なのではないかと感じています。

 

ドイツで感じた木造の理想形

東京の都心にある防火地域では、木造平屋の「ペリカン倉庫棟」(2025年)が竣工しました。手に入りやすい構造用合板を外壁に用い、乾式防腐・防蟻処理を施したうえで、耐久性の高いシリコン系の木材保護塗料で仕上げています。内部は準耐火建築物とするため、柱を一度石膏ボードで被覆し、その上に余った外壁の合板(ヒノキ)を張って仕上げました。汎用的な材料を使いながら、できるだけ〝木の建築〞であることを可視化するようにしています。

 

防火地域 木造準耐火 木質化

45分準耐火構造の「ペリカン倉庫棟」。木製の柱を石膏ボードで耐火被覆した後、その外側に木材を張り廻すことで、燃えしろを確保したJAS構造材の柱と同等の耐火性能を実現している

 

以上のように、「サステナブル集合住宅」と「ペリカン倉庫棟」に共通しているのは、木造を特殊な技術に閉じ込めず、汎用的な方法のなかで育てていくという姿勢です。

その背景には、私が数年前に半年ほど滞在したドイツでの経験があります。ドイツや北欧では、伝統的に木造(木骨レンガ造)が多く、しかも非常に長く使われています。木は経年で反ったりゆがんだりするものですが、それを欠点ととらえるのではなく、調整しながら使い続ける文化があります。

特に木製サッシは象徴的です。日本ではアルミや樹脂が主流ですが、彼らは木製サッシを選ぶ。断熱性能に優れる一方で、耐候性や安定性に課題があることも承知の上。それでも、触れたときの温度や質感、時間とともに変化する表情は、ほかの何物にも代えがたい価値があります。建築が人に寄り添うとはどういうことか。その答えを現地での滞在を通して学びました。

木は変形し、動き、時に不都合も生む。でも、その〝揺らぎ〞を包み込むように建築を成立させることが、人と建築の関係を豊かにします。CLTも、合板も、木製サッシも、そんな関係性のなかに存在する。これからも私は、こうした木の性質を許容した建築を追いかけていきたいと考えています。 [談]

 

動画もご覧ください

 

粕谷淳司[かすや・あつし]

1971 年東京都出身。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院修了。アプル総合計画事務所(建築家:大野秀敏)に勤務後、2002 年カスヤアーキテクツオフィス一級建築士事務所(KAO)設立・主宰。関東学院大学教授。主な著書に『改訂新版 建築を知る:はじめての建築学』『新版 住宅をデザインする:はじめての建築学』(鹿島出版会)、『一生使える! 住宅の高さ寸法』 『各国史がわかるシリーズ 歴史が見えるドイツ図鑑』(ともにエクスナレッジ)など。2022 年ドレスデン工科大学客員研究員

 

ドイツ 歴史 建築

 

写真=渡辺慎一

 

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