休日はtwililight(三軒茶屋)の屋上テラスでビールを片手に本を読もう

ふと行きたくなるお店、本のある空間を楽しめるお店、自分自身と対話するためのお店……。今も昔も変わらず、自分の「想像力」の一歩外側へと連れて行ってくれる本屋さん。インターネット上では出合えない「何か」を探しに、本屋さんへ足を運んでみませんか? 子どものころから本屋さんに通うことが大好きなライターの田村美葉が、東京にある「とっておき」の本屋さんをご案内します。

twililight(三軒茶屋)——陽光がたっぷりと差し込む日常を照らす場所

人生に必要な「余計なもの」を求めて

休日は歩行者天国になる、にぎやかな茶沢通り。通りに面したパン屋さんの脇にひっそりと、秘密基地への入り口があります。階段を3階まで上がっていくと、入り口からは想像できないほど開放的な空間が広がっていました。

 

こじんまりとした入り口とのギャップに驚く、明るく開放感のある店内。カフェスペース窓に向けてソファやチェアが配置されています

 

元は住宅だったそうで、よく見ると当時のお風呂のタイルや古い柱が残されているこの場所は、つくりこみすぎず、どこかほっと一息つける“隙”が残された空間です。店主の熊谷充紘(くまがい・みつひろ)さんが持ち寄った家具や雑貨がそこに溶け込み、コーヒーやスイーツ、名物の「たそがれクリームソーダ」をゆっくり楽しめます。入り口から見て右側の天窓のある空間は、自然光が印象的なギャラリーです。

 

住宅時代のお風呂のタイルをそのまま活かした内装に

天窓から差し込むやわらかな光が、ギャラリースペースを照らします

 

お店に置く本は、心のありかを照らしてくれる内容か否かを考えながら選書されているそう。新刊本をメインに、ご自身が出版された本やレコード、オリジナルのグッズまで販売されています。

twililight」というお店の名前は、正しさや効率が求められる世の中で「無駄なもの」「余計なもの」をなにか付け加えたい、とつけたもの。「黄昏」を意味する「twilight」に「li」を足して「初めから間違っている」状態にしたことで、失敗してもいい、間違ってもいいんだというメッセージが込められています。

「提供したいのは、本だけでなく、ここで過ごす時間」と熊谷さん。茶沢通りを行き交う人々をぼんやりと眺めることができる屋上は、黄昏時、まさにトワイライトにはちょっと特別な場所に。

人生においては「余計」かもしれないけれど大切な時間を過ごしに通いたくなるお店です。

 

屋上にあるとっておきのテラス席で、トワイライトに特別な時間を

 

店舗情報

twililight
住所        世田谷区太子堂4-28-10 鈴木ビル3F・屋上
最寄駅 三軒茶屋(東急田園都市線)
時間        12002100
定休日    火・第一、三水
電話        なし

 

 

 

著者

田村美葉(たむら・みは)
1984年生まれ。金沢市出身。東京大学文学部卒(美学藝術学専修)。エスカレーターマニア。大学入学を機に上京して以来、都会の景色に魅了され、エスカレーター専門サイト「東京エスカレーター」を立ち上げる。著書に『できるだけがんばらないひとりたび』(KADOKAWA)、『すごいエスカレーター』(エクスナレッジ)。

東京には、ちょっとした非日常を味わえる本屋さんが増えています。
わくわくさせる個性豊かな空間を、美しい写真でご紹介。
本好き、本屋好きはもちろん、散策やインテリアが好きな方も楽しめることまちがいなしの一冊です。
人生を豊かにしてくれる出会いがきっと待っているはず。

◆書誌情報
定価   1,700円+税
著者名  田村美葉
ページ数 160
判型   A5判
発行年月 2023/11