ヴェルサイユ宮殿のインテリアは「絶対的な権力」を示すものだった! 家具・インテリアの歴史を徹底解剖

建築知識2024年8月号の特集は「古代エジプトからミッドセンチュリーまで 家具とインテリア詳説絵巻」。
古代エジプト王・ツタンカーメンの玉座、藤原道長も暮らした寝殿造のしつらえ、フランスのナポレオンが愛した椅子、今もなお人気を誇るミッドセンチュリーの家具など——。西洋・日本をメインに、古代から現代の家具をまるっと特集しました!

ここでは、現在開催されている「パリオリンピック」の競技会場にもなっている、ヴェルサイユ宮殿の家具とインテリアについてご紹介します。

ルイ14 世も嫉妬した美しき城、ヴォー・ル・ヴィンコント城

1682年にルイ14世の宮廷となり、フランス王室の本拠地となったヴェルサイユ宮殿。そのモデルとなったといわれるのが、パリ近郊にあるヴォー・ル・ヴィンコント城です。
建築主の大蔵卿ニコラ・フーケがルイ14世を招いてパーティーを催したところ、その豪奢さに王は嫉妬。パーティーから19日後にフーケは逮捕されて失脚、生涯を檻のなかで終えることとなります。その後、城の建築に携わった才能ある芸術家たちは国王に招喚され、ヴェルサイユ宮殿造営を命じられました。フーケの悲劇なしには、ヴェルサイユ宮殿は誕生しなかったのです。

ヴォー・ル・ヴィンコント城

ヴォー・ル・ヴィンコント城の外観(庭園側)

 

絶対的な権力を示す装飾美「国王の寝室」

ヴェルサイユ宮殿 平面図

ヴェルサイユ宮殿2階の平面図(一部)

ヴェルサイユ宮殿造営に伴い、独自のインテリア様式(ルイ14世様式)が確立します。細部にまで豪華絢爛な装飾があしらわれ、王の威厳を示す装置として機能しました。
国王の寝室は、東向きで、2階平面中央に位置します。これは「太陽王」と呼ばれたルイ14世が、自らの象徴(日の出)に面するよう配置を決めたのでした。

ヴェルサイユ宮殿 寝室 ルイ14世

ヴェルサイユ宮殿にある国王の寝室(イラスト:池谷夏菜子)

当時の寝室は、私的空間だけではなく、起床・就寝時に個人謁見を行う公的空間でもありました。優雅な内装とは裏腹に、宮殿での生活や行事は国王が定めた厳格な宮廷作法に従う必要があり、服装、挨拶、参列順(序列)などが管理されていたのです。

謁見に出席できる者は、廷臣などの貴族のほか、王族、医師など特権階級の男性のみ。なかでも起床の儀(毎朝830分開始)に参列できるのはごく限られた人物で、貴族たちはその席を獲得するべく争ったのだとか。謁見が終わると、控えの間を通り、庭園に面した鏡の間で宮廷人たちの挨拶を受け、礼拝堂に赴くのが国王の日課であったといいます。 

ちなみに、謁見などを行う公式の場では、国王や王妃から座る特権を与えられた人(貴族)のみでした。謁見用の椅子も決められています。それは、古代ギリシャ・ローマ時代からある儀礼的スツールに倣ったX形脚のスツール「プリアン」です。座具は通常、部屋の壁際に置かれ、必要に応じて動かして使用したと考えられています。

ルイ14世様式 家具

ルイ14世様式の代表的な家具

……と、「建築知識24年8月号」では、インテリア様式が成立した社会的・文化的背景から、その様式を代表する名作家具まで、約40の様式を徹底解説しました! 家具の詳細なつくりや寸法・用語だけでなく、当時のインテリアデザインまで楽しめる特集です。
小説やイラストなど、創作における時代考証の参考としても役立つこと間違いなし!
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建築知識24/08 古代エジプトからミッドセンチュリーまで 家具とインテリア詳説絵巻
定価 1,800円+税
ページ数 134
判型 B5判
発行年月 2024/08
ISBN 4910034290239