危ないときは逃げるのがいちばん!「逃げ上手の忍者」から逃げる術を学ぼう

忍者は敵地に忍び込む前に、綿密な脱出計画を練ります。
目的を達成したら素早く退散し、情報を持ち帰ることが第一だからです。
防災の視点で考えても、宿泊先の避難経路を確認しておいたり、帰宅ルートにある危険箇所をあらかじめ把握しておいたりすることは、とても大切です。
今回は、忍者から逃げる術「遁法(とんほう)」から、身の守り方を学びましょう。

忍者は闘争ではなく、逃走のプロ

脱出に関する技術は、さまざまな忍術伝書で広く取り扱われています。
特に『万川集海』では、敵地における遁法が数多く伝えられていて、「先考術十ヶ条」では、第一に「事前に敵の城郭・陣屋などの様子をつぶさに調べあげ、術や方便を工夫して潜入口や退出口などを練り上げる事」としています。
ほかにも「隠形術五カ条」の教えでは、撒菱(まきびし)を地面に撒いて撤退したり、身を隠して敵をやり過ごしたりする術なども記されています。
追手から逃れるために、忍者がさまざまな工夫をしていたことがよく分かります。

狸退の術:追手に追いつかれそうになった時、ギリギリのタイミングで、素早くその場にひざまづいて、敵を転ばせる術です

百雷銃の術:爆竹のような爆発音の出る道具を鳴らして、こちらが鉄砲を持っていると思わせて、敵を撤退させる術です

狸隠狐隠の術:逃げられない時に、木の上や水の中に隠れる術です(左) 木石を低い下水中に投げ入れる術:水の中に木や石を投げ入れて、追手に自分が水へ落ちたと思わせて逃走する術です(右)

門閉じる則俄(にわか)に君御出なりと叫ぶ術:撤退時に門が閉まっているときは「主君が外出されることになったので急いで門を開けよ」などと番守を騙して開門させる術です

 

 

まず逃げることを考える癖をつける

初めて訪れる建物に入るときは、必ず逃げる算段(さんだん)を立てておきましょう。
ホテル、百貨店、オフィスビルなどの大きな建物の中では、避難経路を確認したり、入口に戻るための道を覚えておいたりするのです。
飲食店に入ったときも、スムーズに出口へ向かえるルートを頭の中でシミュレーションしておきます。
もし、おかしな人が入店してきても、さりげなくパッと別のお店に移ることができれば、トラブルを未然に回避できます。

また、近年は電車の中でテロ行為が行われる事件も発生しました。
危険を感じたら素早く安全な車両に移動したり、手持ち道具で身を守る心構えをしておいたりするだけでも、いざという時の初期対応に違いが出ます。

自宅のドアを開け閉めする際は、周囲に気を付けましょう。入る瞬間と出る瞬間のいわゆる「際(きわ)」は、隙が生じやすいからです。特に解錠の瞬間は背後に怪しい人物がいないか確認する習慣をつけてください。ドアが開いた瞬間に家の中に押し入られると危険です

座る席はできるだけ逃げ出しやすい場所が好ましいです(店員さんが席を案内してくれる場合は、お店の案内に従いましょう)。また、入口までのルートや非常口の案内に目を通す習慣をつけましょう

本やスマホに熱中してしまうのは無理もないことですが、電車やバスのなかではときどき周りに目を配る癖をつけましょう

 

 

第3回へ、つづく

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定価   1,500円+税
ページ数    128
判型        A5判

発行年月   2023/03
ISBN 9784767830865

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解説

習志野青龍窟(ならしの・せいりゅうくつ)

忍道家。武術家。松聲館技法研究員。港区防災アドバイザー。各種イベントや国内外のメディアに多数出演。映画の忍術指導も担当。山修行や断食の実践、稽古、国際忍者学会への参加など精力的に活動している。今に役立つ温故知新の心身運用法を指導している。小学校や大学などでセミナーや教室なども開催している。
X(旧Twitter)アカウント:習志野青龍窟 忍道家(@3618Tekubi
YouTube:忍道家 習志野修行チャンネル

 

イラスト

齊藤きよし(さいとう・きよし)

忍術研究家。デザイナー。イラストレーター。パルクール講師。桑沢デザイン研究所卒業後、某自動車企業勤務を経て独立し、現在は「Shinobi Design Project」を立ち上げ活動。自ら古典的な忍術を研究・修行・実践し、現代の仕事や暮らしに活かせる生きた忍術を探求。学校等で忍術を活かした体験・実践的な情報教育の指導も行う。著書に『図解 万川集海』。「SDP STORE」にて忍器・忍具の製作と販売も行う。
X(旧Twitter)アカウント:きよし|デザインと忍者とパルクール(@Kiyoshi_Design
公式ホームページ:Shinobi Design Project