階段のパースを完全マスターして画力アップ!「学校の階段」の上手な描き方を徹底解説

皆さんは階段の作画、好きですか?
今回は「階段は形が複雑でパースを取るのが大変……」と思っている方必見の内容です。
難しい階段のパースを簡単に理解できる方法をMAEDAX塾長が解説してくれます。
本記事は動画でも受講できます。気になる人は記事の最後をチェック!!

学校の階段に挑戦!!

みなさんこんにちは!
アシスタント背景美塾のMAEDAXです。
今日は、「学校の階段」のパースの考え方&描き方を皆さんにお伝えしていこうと思います!
ちょっと難しく感じる部分があるかもしれませんが、階段は背景イラストでも重要なモチーフですので、パースを知っておくと便利です。
それでは行きましょう!

 

階段は斜面から描きはじめる

ここでは、2点透視の階段をやっていきます。
まずは水平面から「斜めの面」「斜面」を出していきましょう。
斜めの面を使うことで、パースの効いた階段を描きやすくなります。
はじめに左右それぞれに消失点のある四角形を描きます。

四角形の角から垂直の縦線を2本引いて、両方の頂点を左の消失点につないでください。そうすると紙がL字に折れ曲がったような形が出来上がります。

さらにL字の上と下の角を直線で結ぶと三角形の積み木みたいな形になりました。

 

斜面を4分割する

ここから斜めの面をどうやって階段にしていくか、やっていきましょう。
とりあえず4段の階段にしてみようと思います。
まずは斜めの面を4分割します。
この時の分割線は、レイヤーを分けてできるだけ薄い線で描くと、後々作画がやりやすくなりますよ!
最初に斜めの面に対角線を引いて、線が交わる中心点から左の消失点に向かって線を引いてあげます。

すると斜面を下上に2分割した状態になります。
さらに下半分と上半分も、それぞれ四角に対角線を引いて、中心から左の消失点に向かって線を引きます。

そうすると斜めの面がきれいに4分割されました。

 

4分割した斜面に段差をつけていく

さっき斜面を分割するために引いた線の端から真下に線を降ろしてあげます。
2点透視なので縦線は垂直ですね。

今度は同じ場所から右の消失点に向かって線を引きます。
そうすると、ここに段差が生まれました。

奥のほうも同じように線を引きましょう。
分割した線の端から垂直の縦線を引き、同じ場所から右の消失点に向かう横線を引きます。

斜面を4分割する線は、段鼻(だんばな)の線になるのでここもなぞりましょう。

最後に引っ込んだ部分に線を引いてあげると踏面(ふみづら)が見えてきます。
これで階段の出来上がりです。

 

「坂道の消失点」の取り方

このように斜めの面を分割するとパースの効いた階段を描きやすくなります。
斜めの面は、「坂道の消失点」を活用すればもっと描きやすくなるので、ここで「坂道の消失点」について簡単に説明します。
先程描いた階段の斜めの線(水色)って、実は線を延長していくと、上のほうの消失点に収束していくんです。
この消失点は、アイレベルの高さの右側にある消失点のほぼ真上(真下)にきます。

これを知っておくだけで、斜めの面をとらえやすくなるはずです。
ちなみに斜めの消失点がアイレベルの消失点の真上にくるのは、1点透視と2点透視の時だけです。
3点透視は、真上ではなくなりますので、ご注意ください。
坂道の消失点については「屋根の作画」のライブ配信でも解説しているので、
ぜひご覧ください。

 

「坂道の消失点」を使って階段を2倍に延ばす

さあ、今度は4段の階段を8段に増やしてみたいと思います。
既に描いた4段をパース上で2倍にする作業を行っていきましょう。
いろいろなやり方がありますが、ここでは先ほど説明した「坂道の消失点」を使った方法を紹介します。
先程描いた対角線が再び登場します。
こんどは対角線の中心から、坂道の消失点に向かって線を引きましょう。

そしたら、一番下の角から、さっきの中心線と上の辺が交わる点に向かって線を引きます。
するとこの線が斜面の線にぶつかります。

このぶつかった点と左側の消失点がつながる角度で線を引くと、はじめに描いた斜面の長さをパース上で2倍にした状態になります。

ここまで出せれば、後は同じ手順で斜面を4分割するだけです。

 

高さの違いによる「踏面」の見え方に注意

「踏面」(ふみづら)の見え方は、段の高さによって変わります。
特に段の高さがアイレベルを超えると、踏面は見えなくなるので注意してください。
アイレベルというのは、「カメラの高さ」と思っていただければいいと思います。
なので、アイレベルより上の段は、縦線を描くだけほぼ成立します。

そうすると、こんな感じで8段の階段が出来上がりましたよ。
いい感じですね。

 

ラフから「学校の階段」を描いてみよう

まあ、そうは言っても、今まで解説したようなことは、ただの理屈で「机上の空論なんじゃないの?」と思うかもしれません。
そこで次は「こういう感じの絵を描きたい」っていう、ラフイメージから階段を起こしてみましょうか。
慣れないうちは少しハードルが高いかもしれませんが、先ほど解説した階段の様子をなんとなく思い浮かべながら、大雑把でいいので全体の形のラフイメージを描いていきます。
まず、これが登り階段のイメージです。

次は、降り階段です。
降り階段の高さは、登り階段の高さと同じ距離があります。
降り階段は、下に向かってピューっと線を引いて斜面を描きます。
降り階段は段差が見えないので、わかりにくいですね~。

 

階段の裏側の描き方

さらに、学校の階段は登り階段の先に続く、折り返し階段の裏側が見えていますよね。
この描き方については、少し詳しく説明します。
基準になるのは、最初に描いた階段の斜面の線です。
階段の斜面の線を大きな四角の対角線と捉えて、このような四角形のガイドを描きます。

階段の斜面の線と反対の対角線を下のほうにズーっと延長していくと、先ほど解説した「坂道の消失点」が右側の消失点の真下に生まれます。

この消失点と登り階段の頂上の角を結んであげれば、折り返し階段の斜めの線になります。

加えて、大雑把ですが、登り階段の幅と同じぐらいの奥行きを付けて、そこに向かって下の消失点から線を引くと、階段の裏側の面が見えてきます。

細かいポイントですが、チラッと見えている踊り場の天井部分はアイレベルの右側に消失点を取ります。

 

階段のラフを仕上げる

このラフでは左側の消失点の下に坂道の消失点を設定しました。
分かりにくいかもしれませんが、ラフに消失点を出してみるとこんな感じです。

登り階段の斜面を8分割して・・・・・・

下り階段の踏面は薄っぺらくて、見えないので適当でいいでしょう。

踊り場の床面や天井面は、右側の消失点を使って描きます。左の消失点に向かう線を活用することで、踊り場の通路幅をそろえられます。

さらに、左側の消失点の上にも坂道の消失点を設定すれば、こんな風に手摺(中壁)の線を描くこともできます。

で、角の部分は、頭を挟みそうで怖いので壁にしておきますね。
やさしさです。

蹴上(けあげ)・蹴込み(けこみ)の縦線を垂直に描いて、右側の消失点に向かって踏面を描けば、階段が出来上がります。
細かい話ですけど、蹴上の縦線は少し斜めにすると、それっぽいいい階段になります。
もちろん垂直でも、まったく問題ありません。

そうするとどうでしょうか。
なんとなく階段の姿が見えてきませんか?
ここまでラフを描いておくと、この後、クリスタのパース定規が当てやすくなりますね。
元の絵を重ねるとこんな感じです。

……ん~、ちょっと違うけどね。まあまあこんな感じですよw
今回は、完全な白紙に描いてましたから…。
でも、やってることは、同じなんですね。
パース定規を使って、登り階段の部分だけ線を少し整えてみました。

こうやって、地道に、地道に、書いていくと、こんな感じの階段になっていきます。

 

パースはイラスト作画の便利ツール!!

パースって聞くと、堅苦しく、小難しく考えてしまいますよね。
でも、やっぱり描きたいものがあるじゃないですか!
そういう感覚的なイメージを後押ししてくれる、フォローしてくれるのがパースです。

パースのエッセンスをちょっとでも自分のなかに持っておくと、皆さんが絵を描くときずいぶんラクになると思います。
ぜひ活用してみてください。

今回で「ちょこっと背景美塾」はいったん区切りとなります。
短い連載でしたが、この連載でお伝えしたことが、少しでも皆さんの背景作画に役立つことを願っています。
皆さん最後までお読みいただきありがとうございます。
また、ひょっこり記事を更新しているかもしれませんので、その時は、遊びに来てください!
それでは、さようなら!
MAEDAXでした~!

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MAEDAX
鹿児島県出身。福岡の短大を卒業後、瀬口たかひろのアシスタントとして2 年半活動。週刊漫画連載のチーフアシスタントなどを勤め、15 年に渡り実績を詰む。兄弟子にあたる畑健二郎は「プロのアシスタントとしては恐ろしく有能で、もの凄い技術の持ち主」と評する。同名義で声優名鑑に載るなど、多方面に活躍し、漫画家アシスタントとして日本で一番の知名度を誇る。独立後、フリーのアシスタントを経て201311月に『アシスタント背景美塾』を立ち上げる。著書に『MAEDAXの背景萌え!』(一迅社)、 『即戦力の漫画背景』(幻冬舎コミックス)がある。
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