
前庭に面するダイニング。奥の緑地公園へと視線が抜ける。眺望のための開口部は意匠性の高い造作の木建とした。造作の木建は、既製品に比べて気密・断熱性能が劣るが、ピンチブロックと木部の嵌合により気密性を高め、かつ、内部側にハニカムサーモスクリーンを組み込むことで温熱環境を担保している
前面道路から石積み擁壁で1mほど高くなっていた「緑地公園の家」の敷地。道路側の擁壁は一部を残して撤去し、向かいにある緑地公園と連続するような前庭をつくると同時に、緑地公園と距離をとるようにしています。
一方、敷地奥にはプライベートな中庭を配置。1階は中庭を囲うL字の平面形です。深い軒をかけることで、隣地からの視線を遮り、庭とつながる半屋外の縁側空間をつくりました。
深い軒の屋根はまるで板のように薄く見え、外観は洗練された和の落ち着いた佇まいです。このシャープな屋根面・軒先を実現しているのは、中尾氏が長らく探し続けてようやく見つけたという、コストも無理のないキャップレスの立はぜ葺きです。
ファサード。既存擁壁を撤去し、建物は敷地奥に寄せて、駐車場を確保。そこから芝生の法面を造成して約1mの高低差を解消した。2階建てでありながら平屋のような佇まいで、深い軒が落ち着いた雰囲気を醸し出している
植栽については、落葉樹と常緑樹を交ぜながら樹形の良いものを選定。「配置は室内の各窓からの見え方と、立面的な見え方のバランスを考慮して現場で決定しました。アプローチ階段脇の2本のイロハモミジは、枝が垂れた部分を向かい合わせにし、ゲートのように見立てることを造園職人さんたちと発見して配置しています」(中尾氏)
家具については、コストバランスを考慮しながら主要な箇所は造作に。「面材はシナなど一般的な材料を使いつつ、手掛りやコーナー部は、無垢材(タモ)を採用し、棚の背面や引戸にはラタン材を使うことで、デザインを引き締めています」(中尾氏)。テレビ台やシュークロークなどは、特に高さの設定に注意をし、圧迫感がなく視線や光が抜けるように配慮されています。


















