木造 大屋根 

【折れ屋根の家】木の架構に包み込まれる大らかな住空間づくり ― 石﨑哲也 + 石﨑瑠美子 ―

道路から見ると、高さを抑えたシンプルな切妻屋根の平屋のように見えます。しかし敷地の奥に進むと、折れ屋根が高く広がり、2階建ての気積が確保されています。折れ屋根の軒は深く、あらわしの木の架構が家族の暮らしを包み込みます。高さの変化と深い軒によって周辺環境との距離感を調整した、居心地の良い大らかな住空間を探訪してみましょう。

大屋根 軒裏 木材

大屋根の軒下テラスで過ごす子どもたち。屋根面の一部を跳ね上げるようにして設けたスリットから光が射し込む

 

広がりと奥行きのある空間をつくるため、L字形の平面の上に大きな折れ屋根を架けました。道路に面するL字の短辺は低い水平の棟とし、敷地奥に伸びるL字の長辺は斜めに高くなる棟としました。

室内に入ると、対角線上に走る棟木が視線を斜め奥へと導き、実際以上の奥行きを感じさせます。この屋根形状は、空間の方向性を分散させると同時に、周辺環境への圧迫感を抑え、隣家に影を落とさない形状となっています。庭に向かって大開口を設けた開放的な空間ですが、大屋根により外部からの視線や強い日射しを遮ることで、落ち着き感も与えています。

 

吹抜け 垂木 棟木

2階廊下。天井高は、最も低いところで1,570mm、棟に向かって最高約4,570mmまで高く広がる

 

構造材には静岡県産のスギ材を多く使用。垂木(断面38×184mm)は455mmピッチであらわしにしました。大屋根にはスリットが設けられており、時間や季節に応じて異なる表情の光を軒下と室内に届けてくれます。また、スリット部分にはルーバー床の簡素なバルコニーを設けました。スリットから顔を出して、周辺の桜や緑、遠くの山々を望むことができる、遊び心のある住まいです。

 

外観 勾配屋根 金属立はぜ葺き

南側外観。敷地奥では棟を斜めに高くしている一方、道路側の棟は水平に架けることで高さを抑えた印象にしている。地盤面は道路面より上げることで水害に備えるとともに、道行く人と住人の視線がかち合わないようにした

 

間取り 控えめな外観とは対照的に開放的な内部空間

2階平面図

1階平面図

敷地中央にL字形平面の建物を配置し、南側道路に面して駐車場、北側に庭を設けた。玄関ポーチから隣家との隙間を抜けると庭が広がり、奥に行くほどほど外部の視線から守られた居場所となる。庭には小さな菜園があり、スイカや枝豆を収穫できる

リビング・ダイニング 木構造

1階リビング・ダイニング。窓辺には外部のコンクリートベンチと連続するように木製ベンチを設けた

テラス 夜景

軒下テラス夜景。軒の高さは2,450mm