屋根を軽やかに見せる断熱材
2025年の省エネ基準義務化や2030年に予定されているZEH水準に適合義務化といった断熱基準の強化に加えて、夏の異常ともいえる暑さが社会問題となるなかで、屋根の断熱性能強化は住宅の付加価値を大きく左右する要素となります。
とはいえ、ただやみくもに断熱材を詰め込んで断熱性能を強化すればよい、というものでもありません。「越屋根の家」(設計:リオタデザイン)のように「大きな軒の出を設けて、切妻の小屋組を見せる」というデザインを実現するには、断熱層を含めた屋根の構成を可能な限りシンプルに、かつ薄くしたいからです。熱伝導率が低く、かつ夏の日射(放射熱)を効果的に反射できる断熱材を選ぶことが、理想的です。
こうした課題を解決するために採用されたのが、ポリイソシアヌレートフォーム断熱材「サーマックスRW」(イノアック コーポレーション)である。熱伝導率0・020W/m・Kと高い断熱性能を発揮するとともに、表面のアルミクラフト紙面材が放射熱を跳ね返します。
「40㎜厚と80㎜厚を合わせた合計120㎜厚の『サーマックスRW』を垂木・母屋間に充填し、屋根の懐は小さく、棟から軒先までが1本の垂木というバランスがとれた構成で、私が理想とする屋根デザインを実現しています」
「実際に完成した屋根の佇まいを目の当たりにしてみると、屋根の軒断面の薄さがとてもシャープな印象となり、水平性がより強調される視覚効果を感じました。登り梁を露しにすると屋根面は外断熱になるため、屋根の厚みがどうしても出てしまうのですが、このような大空間でも屋根を軽やかに見せることができるというのは、意匠面からも大きなメリットだと考えています」(関本氏)。
断熱の強化はこれまで主に冬をむねとしてきた様相が色濃いが、これからは夏もむねとして計画するようにしたいものです。軒の大きな屋根という日本の伝統美を現代的な文脈で表現するなら、「サーマックスRW」は理想の断熱材といえるでしょう。
MEMO 「サーマックス RW」による屋根断熱の施工
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