築40年の木造戸建住宅。その断熱改修工事が2020年6月に完了しました。まずは建物の概要を紹介します。
築40年の木造2階建ての家。1階に寝室と浴室、子ども室があり、2階には2層吹抜けになったLDKと子ども室があります。吹抜け部分にはブリッジ空間が設けられています。
断熱改修工事を担当したのは、イン・ハウス建築計画・中西ヒロツグ氏。図面がなく、着工後に解体したため問題は多々ありましたが、旭ファイバーグラス監修のもと適切な断熱材を選択しました。
寸法にばらつきのある壁には、裸の高性能グラスウールが最適
もともと壁には袋入りのグラスウールが設置されていましたが、押込み充塡で隙間があり、断熱性能が十分に発揮されていませんでした。
また、間崩れや補強工事などによる寸法のバラつきがあったため、袋入りではなく裸の高性能グラスウール「アクリアウール」[※1]を89㎜の厚さで充塡し、可変透湿気密シート[※2]を別張りしました。既存建物の制約があり、断熱材の厚みを確保しにくい改修では、繊維の細か高性能グラスウールを採用することで、十分な性能を確保できます。
※1 「アクリアウール」16K、89㎜、熱抵抗値2.3㎡・K/W、熱伝導率0.038W/m・K
※2 冬は通常の防湿気密シートのように湿気を通さず、夏は壁体内が高温多湿になりカビや結露が発生しそうになると湿気を通し、通年を通して壁体内を良好に保つよう機能する「タイベックスマート(現VCLスマート」(旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ)を採用
厚みを確保できない屋根には、より高性能なグラスウールを設置
屋根は、壁と同じ「アクリアウール」を厚さ180㎜で、充填する予定でしたが、解体してみると梁成が150㎜しかなく、通気層も確保されていなかったため、通気部材「風通し銀次郎」を設置する必要が生じました。
結果、「厚みを抑えつつ断熱性能を上げるため、さらに断熱性能が高い『アクリアウールα』[※3]を採用しました」(中西氏)。
※3 「アクリアウールα」20K、140㎜、熱抵抗値4.1㎡・K/W、熱伝導率0.034W/m・K
根太床には、カットできる高性能グラスウールを採用
床の断熱は、土台・大引の間に「アクリアUボードピンレス」[※4]をタッカー留めする計画だったものの、1階の床段差を解消するために、根太床にしました。そのため、根太間断熱用の「アクリアUボードNT」[※5]を採用しました。
※4 「アクリアUボードピンレス」24K、80㎜、熱抵抗値2.2㎡・K/W、熱伝導率0.036W/m・K、不織布あり
※5 「アクリアUボードNT」24K、80㎜、熱抵抗値2.2㎡・K/W、熱伝導率0.036 W/m・K、不織布なし
快適で省エネな住まいを実現
今回の改修の断熱仕様は、6地域における平成28年度省エネ基準(UA値0.87W/㎡・K)以上を目指しました。
改修後の計算値でのUA値は「0.61W/㎡・K」。断熱改修の結果、真冬の朝での2階リビングは16℃前後を保つ快適な住まいとなりました。
設計:中西ヒロツグ(イン・ハウス建築計画)
施工:鳶高橋
取材協力:旭ファイバーグラス