全生活排水の100%近くを再生循環
「WHOLE EARTH CUBE」は、トレーラーの車台などで移動が可能。災害時の避難施設、社会インフラが充実していない土地での宿泊施設・別荘などでの利用が考えられます。開発を手がけたのは、災害に強い社会づくりを目指す北良(岩手県北上市)。核となる水の再生には、世界中の水問題の構造的解決を目指す企業WOTAの技術が採用された。全生活排水の100%近くを再生循環する仕組みです。
「WHOLE EARTH CUBE」を2023年3月に世界で初めて導入したのが、水インフラの財政赤字に悩んでいた東京都利島村。4tトラックに積載可能な「10ftモデル」が設置されました。建築設計を手がけた粕谷淳司氏(カスヤアーキテクツオフィス/KAO)は次のように振り返ります。
「離島の利島村は道路が狭く、従来からの『40ftモデル』は設置できなかったので、『10ftモデル』を開発。狭隘道路でも運送可能でユニックで積み下ろしできる点も離島向きですね。工場で3種類のユニットを製作して現場で4つのキューブを組み合わせています。利島村は水資源に乏しいので、導入の意義は大きいです」。
水インフラの安定的な確保は社会的な課題。「WHOLE EARTH CUBE」には、それを解決する大きなポテンシャルが秘められています。
快適性を高める断熱材は災害にも強い
ポリイソシアヌレートフォーム断熱材「サーマックスRW」(イノアック コーポレーション)を用いて、良好な温熱環境を実現したのも、「WHOLE EARTH CUBE」の大きな特徴。日本における災害時の避難施設では、温熱環境が良好とはいえず、残念ながら、二次災害も起きているが、「WHOLE EARTH CUBE」はこうしたものとは一線を画しています[※1]。しかも、水に強いという「サーマックスRW」の特徴も十分に生かされた断熱計画となっています[※2]。
※1 熱伝導率は 0.020W/m・Kと高い断熱性をもち、さらに表面材のアルミクラフト紙面材が抜群の遮熱効果を発揮する。その効果は日射面での内外温度差が高いほど大きく、温度差が20℃ある場合には理論値よりも約25%熱抵抗値を押し上げることが確認されている
※2 独立気泡構造をもつ発泡素材であるため、吸水量が 0.9g/100㎤ と低く、水に濡れても吸水せず、防水性・防湿性が高い
「実際には、10ft(約2.9m角)という限られたスペースのなかに、必要な断熱性能をいかに確保するか、鉄骨による熱橋の影響が課題となりました。対策として、鉄骨の内部に木下地を組み込み、『サーマックスRW』を充填。スペースを確保しつつ(壁内法で2.5m角)、熱橋を防止。後の分離・移動も考慮して連結部は防水のテント生地とマジックテープで仕上げたので、その部分にも、断熱性に加え、耐水性にも優れている『サーマックスRW』を採用しています」(粕谷淳司氏)。
「サーマックスRW」は、災害に強いという観点で「WHOLE EARTHCUBE」のような、オフグリッドハウスに最適。もちろん、高い断熱・遮熱性でもたらされる快適性という付加価値は、何物にも代えがたいものです。
設計=カスヤアーキテクツオフィス/KAO
製作・施工=北良
水処理再生技術=WOTA
断熱材=サーマックスRW/イノアック コーポレーション