川上→川中
原木の流通を“Excelで見える化”して滞留を0にする
富山県西部森林組合
原木搬送においては伐採地である“先山”から集積地となる“山土場”までの区間では、フォワーダなどの高性能林業機械による搬出が可能ですが、急峻な地形条件などにより、そもそも山土場を設けることができないケースも少なくありません。また、山土場から中間土場への小運搬、山土場から製材所などへの直接運搬は、原木の径級や用途ごとに異なる形態での運搬が求められますが、その最適解が見いだせず、各土場に原木が滞留してしまうことも多いといいます[※1]。
これに対して、富山県西部森林組合は、原木流通の全工程を一体的に把握・管理する仕組みづくりを進めています。積み込み・小運搬・荷下ろし・検尺、仕分け・運搬といった多岐にわたる工程を「MicrosoftExcel」ベースのシミュレーションシステムによって管理[図]。Excelという誰もが扱えるフォーマットを活用することで、原木の情報に関係者全員がアクセス可能となり、原木滞留時間の長期化防止、非効率な運搬の抑制を目指します。
※ 1 針葉樹の場合、春・夏といった水を吸い上げる時期に伐採された原木が長期間放置されると、虫害(穿孔虫)を受けるなど、品質低下のリスクが高まる
MEMO |富山県西部のスギは加工性に富む
富山県西部森林組合が森林整備を行っている富山県の西側6市(氷見市・高岡市・射水市・小矢部市・砺波市・南砺市)の人工林は90%以上がスギです。生産される原木丸太の特徴は、適度な強度と加工の容易さを兼ね備えています。建築用材から合板用材、製紙・燃料用チップまで、幅広く利用されています。
中間土場とICTの組み合わせで原木運搬の効率化を実現
長崎県森林組合連合会
長崎県では、県内で生産される原木の多くが県外へ移出されるという流通構造を背景に、原木輸送の効率化が大きな課題となっています[※2]。県外需要先へ納材後、帰り荷が確保できない場合には、運搬効率がさらに低下するという問題も生じているといいます。
これに対して、長崎県森林組合連合会は中間土場を設置。山土場・中間土場間を小型車でピストン輸送、中間土場に原木を集荷して大ロット化を図り、中間土場から県外の需要先へ大型トレーラーで効率的に運搬、さらには帰り荷として、製材品などを運搬する往復輸送を前提とした物流計画を構築していきます。
また、さらなる効率化を実現するため、デジタル技術も駆使。「WEB配車システム」(東海業務ソフト)[ 図上] と林業専用ICTプラットフォーム「Soko-co Forest」(BREAKTHROUGH)[ 図下]を活用して、原木の生産・搬出状況や山土場・中間土場の在庫状況、出荷・配車計画といった情報を共有、PCやスマートフォンから、関係者が即時にアクセス・閲覧・計画変更などができる環境構築に取り組んでいます[※3]。
※ 2 県内に原木輸送を担う運搬業者がいないため、隣県業者が空荷で原木を引き取りにきているのが現状である。さらに山土場はアクセスが悪い場所がほとんどであるため、大型車での引取りが難しく、積載量が少ない小型車で原木を引き取り、小ロットで県外へ運搬するという非常に効率の悪い流通構造にある
※ 3 原木の生産情報取得については、丸太画像検知AIシステム「Log-co」(BREAKTHROUGH)を活用。原木の本数や材積を算出する丸太検知作業を画像解析によって自動化。
原木情報取得の作業効率も高めていく
MEMO |長崎県のヒノキは意匠性が高い
長崎県の森林は、全国的にもヒノキの生産比率が高い地域であることが大きな特徴。県内の人工林面積の約7割をヒノキが占めています。長崎県のヒノキは、年輪の目が詰まり、色味は淡いピンク色を帯びており、視覚的にも美しいです。
川中→川下
プレカットから変える近未来のスマートな木材物流
宮川工機株式会社
プレカット加工機メーカーである宮川工機(愛知県豊橋市)では、自社のCADデータを生かした木材流通のサポート態勢づくりに注力しています。木材運搬での積載計画や荷姿の検討は、経験者のカンに大きく依存しており、近年では、国産材やプレカット材の海外輸出も増えているにもかかわらず、コンテナへの積み込みや梱包、インボイス対応といった作業は、依然としてアナログな手法に頼るケースが多いままです。
これに対して宮川工機は、同社のプレカットCADがもっている材料1本ごとの寸法情報や、建物の配置情報を活用することで、現場での荷下ろし順を想定した最適な荷積み計画を、事前に想定できるようにする―という取り組みを開始しました[図]。
同社は、プレカット工場との結び付きが強く、CAD入力を支援するサポート部門を擁するという強みがあります。こうした強みを生かし、誰もが均一な品質で荷積み計画を立てられる仕組みを整えて、“属人化していた作業の標準化”という可能性を探っています。
MEMO |プレカット技術の進化を支える
宮川工機は、木造在来軸組構法や金物工法に対応するプレカット加工機、およびCADなどの周辺ソフトウェアを製造・販売。2×4工法・サイディング・断熱材の加工に加え、近年では国立競技場の屋根や万博の大屋根リングにも採用された非住宅向け大断面材加工・CLT(Cross Laminated Timber)加工など、幅広いラインアップの加工機を製造・販売しています。
川下(工事現場)の情報共有化で原木・製品運搬の最適化を実現
株式会社コシイプレザービング
木材流通では、川下である工事現場の情報が、川中や川上に十分に共有されていないことが、さまざまな無駄を生む要因となっています。在庫の過剰な滞留や不足、2重運送や非効率な再搬送が発生することも少なくない。これに対してコシイプレザービング(大阪府大阪市西区)では、川下(工事現場)の情報を起点に、木材流通全体を可視化・最適化するクラウド型の情報共有システム「BUILD BASE PLATFORM」[図]を開発しています。
同システムでは、製材所・運送会社・原木供給者など、川上から川下までの各プレーヤーが登録ユーザーとして参加し、実際の需要の状況、それに対する供給体制、運送などの処理の進捗といった情報を、1つのプラットフォーム上で閲覧・共有できます。
一方、木材流通には長年培われてきた商習慣があり、関係する事業者も多岐にわたります。そのため、すべての情報を一律に共有するのではなく、どの情報を、どの範囲まで共有すべきかを慎重に見極める必要があり、試験運用を通じてシステムの精度を高めています。
MEMO |木材を“ 長く使う” ための技術を担う
コシイプレザービングは、木材の防腐・防蟻薬剤の販売と処理を専門とするメーカーとして、長年にわたり木材の耐久性向上に取り組んできた。同社は、宮崎県に生産拠点を構え、全国でも有数の生産量を誇るスギを中心に、防腐・防蟻処理を行っている。「BUILD BASE PLATFORM」の試験運用も、木材の生産量や流通量が多い宮崎県で実施中。
電話番号:03-6261-9134
Mail:kouritsuka@zenmokukyo.jp

















