一級建築士が推薦。建築リノベーション初心者のための書籍6選!

住宅・非住宅問わず、数々の建築リノベーション設計を手がけてきた一級建築士の中西ヒロツグさん(イン・ハウス建築計画)。今回は、中西さんがオススメする「本棚に置いておくとリノベーションの設計に役立つ」6冊ご紹介!中西さん曰く、“すべての建築行為はリノベーション”。これからの時代に必要な知恵が満載です。

すべての建築行為はリノベーション

住宅・非住宅問わず、さまざまな建築のリノベーションを手がけてきた一級建築士の中西ヒロツグさん(イン・ハウス建築計画)は、著書(各務謙司/カガミ建築計画との共著)である『住まいのリノベ設計塾』において、リノベーションを次のようにとらえています。

「リノベーションの面白さは過去に学ぶことにあると思います。先人たちが長い時間をかけて築き上げた知恵を現代の状況に合わせて読み替え、新しい価値として未来につなげていく行為には、現代の建築に携わる者として大きな使命感を覚えます」

「今ほどリノベーションが盛んではなかった一昔前は、建築家仲間から『面倒な設計を引き受ける、もの好き』と揶揄されたものですが、考えてみればゼロから生み出される空間などなく、すべての建築行為はリノベーションであり、歴史や環境を生かしながら暮らしに寄り添ってデザインすることこそ、建築家に求められる職能だと思います。『表現ではなく、解決のためのデザイン』をミッションとして、人と空間を整える姿勢で仕事に臨んでいます」

 

中西ヒロツグー1964年大阪府生まれ。’86年京都工芸繊維大学工芸学部住環境学科卒業。同年、菊竹清訓建築設計事務所入所。’99年イン・ハウス建築計画を設立。木造戸建住宅リノベーションに数多くの実績があり、著書に『暮らしやすいリフォーム アイデアノート』、『住まいのリノベ設計塾』(エクスナレッジ刊)

“すべての建築行為はリノベーション”。こうした理念を実務に落とし込む場合に、必要となる知恵を蓄えるための書籍について、中西さんがお勧めの書籍をご紹介します。

今回・中西さんが選んだ本はこちら!

01.『住まいの解剖図鑑』
02.『時がつくる建築・リノベーションの西洋建築史』
03.『納得の間取り・日本人の知恵袋』
04.『建物改修・活用のための建築法規』
05.『住まいのリノベ設計塾』
06.『暮らしやすいリフォーム アイデアノート』

 

01.『住まいの解剖図鑑』

言わずと知れたエクスナレッジ発行のベストセラー書籍。とりわけ、住まいの設計手法(やり方)だけではなく、その理念(考え方)がまとめられたCHAP.3には、新築・リノベーションを問わず、住宅設計に関わる大切な考え方が記されています。それは、私の師である菊竹清訓氏の『か・かた・かたち』になぞらえれば、『か』に該当する部分であり、ややもすれば、CHAP.1やCHAP.2で解説されている、やり方の頁に目が行きがちですが、ぜひ、CHAP.3をしっかりと読み込んでもらいたいと考えています。


『住まいの解剖図鑑』
定価 1,800円+税
著者名 増田奏
ページ数 207
判型 A5判

 

02. 『時がつくる建築・リノベーションの西洋建築史』

西洋の建築においては、中世などに建築された歴史的な建築物が数多く存在し、それを修復しながら再利用するという文化が根強く残っています。リノベーションこそが建築的創造行為とされてきました。これはスクラップ&ビルドとは一線を画すものであり、本書では、リノベーションの本質を歴史的な視点から学ぶことが可能となっています。私自身も、リノベーションの意義に迷い始めた時に背中を押してもらった本です。

『時がつくる建築・リノベーションの西洋建築史』
出版:東京大学出版会
定価 3,600円+税
著者名 加藤耕一
ページ数 360
判型 四六判

 

関連書籍:『建築知識2024年4月号』—中世ヨーロッパの建物と街並み詳説絵巻

03. 『間取り百年 生活の知恵に学ぶ』

標準的な木造建築設計の第一人者である建築家・吉田桂二氏の著作です。明治から平成にかけて、日本の住まいと暮らしがどのように変化してきたか、その背景とともに詳しいイラスト付きで解説されています。西洋の受け売りでも、ノスタルジーでもない、日本型の住まいとは何かを考えさせられる本。リノベーションに取り組むに当たっては、その対象となる既存建築への十分な理解が必要。その意味においても重要な手引書になると考えています。

『百年の間取り 生活の知恵に学ぶ』
出版 彰国社
定価 1,800円+税
著者名 吉田桂二
ページ数 200
判型 四六判

04.事例と図でわかる 建物改修・活用のための建築法規

下記の動画でも解説している通り、商業地などでニーズが多い用途変更を伴うリノベーションなどは建築基準法や消防法などの法規への理解、しかも“既存不適格”に対する的確な判断が求められます。しかしながら、こうした知識を習得するのは非常に大変。本書では、既存不適格建築物の適法なリノベーションを得意とする佐久間悠氏(建築再構企画)が、それに必要な建築法規の知識を網羅的に解説しています。非住宅建築のリノベーションを設計する際には、手元に置いておきたい書籍です。


『事例と図でわかる 建物改修・活用のための建築法規』
出版社 学芸出版社
定価 2,500円+税
著者名 佐久間悠
ページ数 220
判型 A5

参考動画:【建築知識】検査済証のない建物の再生手法

 

私が、各務謙司さんと書いた本になります。本書では住宅の用途を戸建住宅(主に木造住宅)とマンションに分けて、戸建住宅のほうを私が、マンションのほうを各務さんが執筆を担当しています。間取り、設備、水廻り、造作家具、現場監理、法規など、住宅のリノベーションを設計する上で必要な知識を網羅的に解説。もともとは「建築知識」から誕生した書籍でもあり、“表現ではなく、解決のためのデザイン”がテーマ。図面や写真などを含めて、情報量はかなり豊富ですので、何かしらお役に立てるのでは、と考えています。


『住まいのリノベ設計塾』
定価 2,600円+税
著者名 各務謙司・中西ヒロツグ
ページ数 160
判型 B5判

06. 暮らしやすいリフォーム アイデアノート

『住まいのリノベ設計塾』とは異なり、一般の方に向けて、暮らしという視点を交えながら、リノベーションの設計手法を解説した本になります。得てして、設計者は見た目の刷新や、びっくりするような仕掛けを意識した提案をしがちですが、現状の暮らしで困っていることを分析し、それをデザインとして表現するのが設計者の責務であると考えています。発行から10年余りの月日が流れていますが、内容は普遍的。暮らしの改善に向けた解決方法がまとめられているので、今でもお役に立てるのではと考えています。

『暮らしやすいリフォーム アイデアノート』
定価 1,500円+税
著者名 中西ヒロツグ
ページ数 240
判型 A5判