山手線に乗って、知らない東京を探しに出かけよう。『山手線の名建築さんぽ』

東京で一番馴染みがあり、よく利用しているはずの山手線。その周りには、意外な名建築が眠っているかもしれません。山手線の全30駅を徒歩で回りながら、周辺の建築を鑑賞するためのコンパクトなガイドブック。
2駅ごとに写真と文章でわかりやすく見どころを紹介。MAPも付いているので、駅からの距離の目安もわかり、見学プランを立てるのにも便利です。

都内で「山手線ツアー」をはじめとする各種建築ツアーを開催している著者が、まるで語り掛けるように街を案内します。

◆新橋・浜松町

堀ビル

生き残ったレジェンド

鍵や建築金物を取り扱う堀商店のショールームとして1932年に建てられました。明治23年創業の老舗で、関東大震災前の社屋も塔屋を持つ木造洋風建築で一際目立つ存在でした。銀座4丁目の角地にある銀座和光(旧服部時計店)も曲面が特徴のデザインです。どちらもほぼ同時期に震災に遭い再建されています。規模の大小はあれど、双方とも企業の商品を取り扱うビルとして華々しく登場した共通の歴史をもっています。

DATA

設計:公保敏雄、小林正紹

竣工:1932(昭和7)年

改修:竹中工務店、2021(令和3)年

住所:港区新橋2丁目5-2

 

◆田端・西日暮里

島薗家住宅

生化学者が愛した モダンな暮らし

生化学者の島薗順雄が結婚を機にドイツ建築に造詣深い建築家矢部又吉に依頼し、建てた住宅です。軒下のレリーフ、パーゴラ、トレリスなど表から見るとモダンな洋館に見えますが、東側には和館が連なります。玄関脇の書斎には造り付けの書棚があり、壁面いっぱいに医学書等で埋め尽くされています。

DATA

設計:矢部又吉

竣工:1932(昭和7)年

住所:文京区千駄木3丁目3-3

高田馬場・目白

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館

屋外での舞台上演も想定

外観にハーフティンバー様式をあしらった洋館

なぜこんなところにこんな建物が? と思う方もいるでしょう。早稲田大学キャンパス内の奥まった場所にある、ハーフティンバー様式の外観が目を惹く建物は文学部教授だった坪内逍遙の古希を記念して作られた日本初の演劇博物館です。彼の半生を費やした「シェイクスピヤ全集」翻訳の完成を機に、国内外の演劇に関する資料を公開する博物館の建設が決まりました。

DATA

設計:今井兼次ほか早稲田大学営繕課

竣工:1928(昭和3)年

住所:新宿区西早稲田1丁目6

 

◆品川・大崎

グランドプリンスホテル新高輪

老境の村野藤吾が果敢に取り組んだ集大成

レースのような白い透かし模様の丸みを帯びたバルコニーがリズミカルにホテルの外観を形作っています。ホテルの品格を示すかのように気品高くそびえ立つこのホテルは建築家村野藤吾の最晩年の作品です。残念ながら何度かの改修工事を経て、ロビーの内装は大きく変わりましたが、柱の位置や天井に埋め込まれた照明器具など部分的に村野のオリジナルデザインを見ることができます。

 DATA

設計:村野藤吾 

施工:1982(昭和57)年

住所:港区高輪3丁目13-1

 

*各建物の情報については変更されている可能性もあります。おでかけの際は事前に最新情報をご確認ください。

定価        1,800円+税

著者名和田 菜穂子

ページ数                224

判型        A5判

発行年月日            2022/09/13

ISBN      9784767830308

 

 

和田菜穂子(わだなほこ)
新潟県生まれ。建築史家、博士(学術)。慶応義塾大学大学院博士課程単位取得退学。コペンハーゲン大学留学後、東北芸術工科大学、東京藝術大学を経て、2022年より東京家政大学准教授。慶応義塾大学、中央大学等でも非常勤講師を務める。2016年より一般社団法人東京建築アクセスポイントを設立し、代表理事を務める。近現代建築の魅力を一般に広めようと各種建築ツアーを実施。主な著書に『近代ニッポンの水まわり』(学芸出版社)、『北欧モダンハウス』(学芸出版社)、『北欧建築紀行』(山川出版社)、『ウッツォンの窓の家』(彰国社)、『アルヴァ・アアルト もうひとつ の自然』(国書刊行会)。
東京建築アクセスポイント