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「全部見せ」で、飾らないのにカッコいい。
今回ご紹介するのは、家族4人[※1]が住むためにつくられた、建築面積31.67㎡の「仮」住まい。収納スペースが足りない分、隣接する実家や祖母の家を活用する「借り住まい」を取り入れたり、収納物を隠さないオープンな壁面収納や可動棚を活かしたりすることで、シンプルながらも効率的な住まいをつくり出しています。
オープン収納棚いっぱいに並べられたアイテムが生活を彩る、ワンフロアの住まい。
※1 竣工当時。現在は家族5人が暮らしている
1.ガラス瓶に「入れる」だけ。「見せる収納」のススメ
よく使う食品や調理器具はガラスの瓶やオープンラックに置いて「見せる収納」に。カラフルなグラノーラやコーヒーカプセルを使えば、ちょっとしたアクセントにもなり、空間が活き活きとして見えます。単調さを避けるため、アイテムを前後に並べてリズムを加えるのもポイントです。
ガラス容器は「キャニスター」とも呼ばれ、サイズや素材、デザインにもバリエーションがあります。
2.アイテムは整えるべからず。「崩しの美学」
家具や収納アイテムのテイストを揃えるのが一般的ですが、あえてバラバラの要素を取り入れることで、個性的な空間になります。たとえば、レンジフードの下には、七味の小瓶やマッチ箱、子どもの誕生日でつかった蝋燭など、あえて関連性のない“崩し”のアイテムを無造作に配置。雑然とした要素を意識的に取り入れることで、生活感が目立たなくなるのです。
レンジフード下の棚。左上に“崩し”のアイテムが並ぶ。全体が三角形になるよう並べると、整った印象に。
「三角構図」と呼ばれるディスプレイテクニックの1つでもあります。
3.構造用合板を使ってほどよくラフに。
おしゃれな収納に欠かせないのが、構造用合板を使った棚。合板は木目が豊かで、素材自体がインテリアの一部として機能します。棚の小口(切断面)に見える積層をあえてそのまま見せ[※2]、強調することで、収納スペース自体にも情報量が加わり、多少物が雑然と置かれていても、その自然な木目が全体を包み込み、雑然とした印象を与えないのがポイントです。
どことなく海外風。思い出の写真、お気に入りのアイテムを飾れば、住まいの特等席に。
※2 棚板の小口は木材を薄くスライスしたテープなどで仕上げられることが多い
4.壁面に遊び心と余白をプラスする「壁掛け収納」
帽子やバッグなど日常的に使うアイテムを壁に掛けるだけで、空間がぐっと引き締まります。無骨なデザインのフックを使い、適度に壁の余白(壁全体の20~30%が目安)を残すことで、雑多な印象にならず洒脱に見せることが可能です。
帽子+リュックのセットを同じ感覚で配置。「均等配置」というディスプレイテクニックの1つでもあります。
5.生活感を程よく隠す「死角収納」
すべてのアイテムを見せるのではなく、強すぎる生活感を持つ物は隠してしまうのも大事なテクニックです。たとえば、ラップフィルムや掃除道具など、存在感が出すぎる物はポリエチレンケースや籐製・布製の収納ケースなどの「死角」にまとめて収納。これにより、雑然とした雰囲気を抑えつつ、生活に必要な物を適度に隠すことで、すっきりとした空間を保つことができます。
可動棚は子どもたちの机としても使われています。2人並んでも使えるちょうどよいサイズ感です。
6.あえて深めの「奥行き600mm」で収納力も担保。
収納棚の奥行きは一般的に450mmですが、600mmと深めに設定することで収納力が飛躍的にアップします。使用頻度の低いアイテムを奥に、よく使うアイテムを手前に配置することで、限られたスペースを最大限に活用。奥行きのある棚は、特にキッチンやリビングで重宝され、見せる収納と死角収納のバランスを取るのに最適です。
こっそり食べたいおやつの置き場にも重宝しそうです。
ありのままの生活を見せながら整う。生活感を味方に
家の中に散らかる雑多な要素を隠すのではなく、逆に活かしてしまうことで、雑多さをもインテリアの一部として取り入れることが可能です。どんな家でも実践できる「見せる収納」や「崩しの美学」を取り入れれば、個性と機能が融合した自分だけの空間を作ることができます。今回ご紹介した6つのアイデアを参考に、あなたの住まいももっと楽しく、もっと自由にカスタマイズしてみてはいかがでしょうか。
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掲載協力「HOUSE-KT」(加藤小屋)設計:N.A.O|ナオ 一級建築士事務所、写真:花岡慎一、挿入イラスト:久米火詩