女性キャラの胴体を描くときに押さえるべき4つのポイント

前回は、男性の胴体をモデルに、立体感のある胴体の描写のポイントについて解説しました。
今回も引き続き、胴体作画のコツについて解説してもらいましょう!
今回のテーマは「女性キャラの胴体」の描き方です。

女性キャラの胴体は、脂肪の丸みを意識する


前回、男性の胴体のポイントになる断面を教えてもらいました。
女性の場合はどうでしょうか?

加藤
「バスト(胸)」「ウエスト」「お腹周り」「ヒップ(腰回り)」を押さえておくとよいでしょう。
女性は、皮下脂肪が多いので、男性よりも丸みを帯びた断面形状になります。
特に「ヒップ」と「お腹回り」は皮下脂肪が豊富で、骨盤も幅広です。

そして、断面形状の性差が最も顕著なのは、やはり「バスト」ですね。

皮下脂肪の付き方は個人差が大きく、脂肪の厚みの標準的なデータはない。ちなみに、昔は「指つまみ法」という方法で、皮下脂肪層の厚みを計測していた。皮膚を指でつまんだときの厚みの半分を皮下脂肪層の厚みとする方法だ。


私も女性キャラは「足の付け根」「お腹回り」「ヒップ」を立体的で魅力的に描けるように意識しています。
この部位は、キャラの人気に直結すると言っても過言ではないと思います。

 

「服の皺(しわ)」は、頂点から裾(すそ)に広がる


私の個人的な課題としては、着衣時の胴体の表現です。
体の起伏に応じて、服がフィットする部分と逆に隙間が生じる部分の描き分けは、難しく感じます。
魅力的なキャラを描ける人は、こういう表現がとても上手だと思います。

加藤
服は体の上面に引っ掛かるように乗っているので、基本的に「肩」や「胸」を頂点に、服の皺(しわ)を裾(すそ)に向かって放射状に走らせると自然な表現になります。

また、服のフィット具合は皺の深さでも表現できます。
ゆったりした服は、皺の溝が深くなりますが、タイトな服は皺の溝が浅くなります。


やっぱり、リアルな服の皺の入り方を知っておくのは、とても大切ですね。
私のイラストは、バストのふくらみやウエストのくびれを誇張するようなデフォルメを加えましたが、あるていど自然な作画になっていると思います。


横から見たアングルは、実際よりも胸を前に、おしりを後ろに突き出すようなシルエットをつくることで「女性らしさ」を強調しました。


とはいえ、個人的にはもう少し改良の余地があると思います。
立体感のある皺はカラーだと表現しやすいのですが、モノクロの線画で立体感を表現するのは難しいです。
リアルな皺をベースに、うまく線を取捨選択できるようになりたいですね。

 

下着のない乳房は下に広がる、下着を着けた乳房は前方に膨らむ

加藤
ついでに、下着を着けた状態と、着けていない状態でバストの形状がどのように変化するかも解説しておきましょう。

下着を着けていない乳房は、重力に引かれて下に垂れますが、このとき上面から見ると少し外側(左右)に広がるように垂れます。
横から見ると乳首を境に下面が丸みを帯び、上面はやや直線的になります。

一方、下着を着けると乳房が内向きに引き上げられるので、上面が丸みを帯びるようになります。
また、上から見ると膨らみの頂点が前を向くようになります。

加藤
乳房を描くときは、胸郭の土台を描いてから、その上に胸(乳房)のボリュームをつけるようにすると作画が安定しやすくなります。
試してみてください。

次回は、胴体の筋肉描写について、もう少し詳しく見ていこうと思います。

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畑健二郎(はた・けんじろう) 
漫画家。福岡県生まれ、兵庫県出身。『ハヤテのごとく!』(小学館)、『それが声優!』(はじめまして。)、『トニカクカワイイ』(小学館)などの人気マンガ作品を数多く執筆している。『トニカクカワイイ』は、週刊少年サンデーにて大人気連載中!
X(旧Twitter)アカウント:畑健二郎@『トニカクカワイイ』連載中!(@hatakenjiro

                       

加藤 公太(かとう・こうた)
美術解剖学者。イラストレーター。グラフィックデザイナー。東京都生まれ。文化服装学院 服装科卒業。東京藝術大学デザイン科卒業。東京藝術大学大学院美術解剖学研究室修了。X(旧:Twitter)で“伊豆の解剖学者”(@kato_anatomy)として美術解剖学に関する情報を発信している。