暗闇で敵に先制攻撃を仕掛ける技
忍者は、暗闇で敵を探したり、障害物を避けたりするために「座探し」という技を使っていました。
鞘から刀を半分抜いた状態(半がかり)で低く構え、周囲を探りながら暗闇を進みます。
この時、鞘が刀から抜け落ちないように、下緒を口や手で手繰るのがポイントです。
こうすることで、鞘の先に敵が触れた瞬間に、すぐさま鞘を払って相手を斬りつけることができました。
「座探し」は「下緒利法七術」と呼ばれる下緒を使った技の1つです。
下緒のほかの使い方についても、紹介していきましょう。
下を帯にする事
敵に帯を切られたり、寝ている時に緊急事態が起こったりして帯がないときに、下緒を帯の代わりに使います。

「下緒」は刀の鞘に付いている紐のことです。本来は、帯刀したときに刀を腰紐に固定するために使います
下緒の一般的な長さは5尺(約150㎝)程度とされますが、帯として使うには8尺(約240㎝)ほど必要です。
そのため忍者の下緒は、普通のものより長いのです。
登攀
刀を立て掛け、鍔(つば)の部分を足がかりにすれば、高い所によじ登れます。
下緒の端を口に咥えたり、足首に巻きつけたりしておけば、よじった後に、上から刀を回収できます。
旅枕
刀と脇差の下緒を結んでおいて、体の下に敷いて寝ます。
こうすることで、眠っている時に刀を奪われそうになっても、気が付くことができます。
起きてすぐ、急いで出発しなければならないときは、下緒ごと刀を首にぶら下げて、身支度します。
槍停
槍を持った相手と戦うときに使う技です。
下緒の先に小刀を結びつけ、下緒で槍を絡めとります。
そのまま、相手との距離を詰めて、小刀で討ちます。
暗闇を手探りで進む稽古
両手で前方を探りながら、顔を守るようにして進みます。
壁を伝って歩くのも良いでしょう。
低い姿勢で稽古すると、火災の煙を吸わないように身をかがめて移動する練習にもなります。
慣れてきて、安全に動き回れるようになったら、今度は木の枝やラップの芯などの棒を持って、周囲を探りながら進みます。
手探りで進むよりも、簡単に進めることが分かると思います。
第7回へ、つづく
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定価 1,500円+税
ページ数 128
判型 A5判
発行年月 2023/03
ISBN 9784767830865
解説
習志野青龍窟(ならしの・せいりゅうくつ)
忍道家。武術家。松聲館技法研究員。港区防災アドバイザー。各種イベントや国内外のメディアに多数出演。映画の忍術指導も担当。山修行や断食の実践、稽古、国際忍者学会への参加など精力的に活動している。今に役立つ温故知新の心身運用法を指導している。小学校や大学などでセミナーや教室なども開催している。
X(旧Twitter)アカウント:習志野青龍窟 忍道家(@3618Tekubi)
YouTube:忍道家 習志野修行チャンネル
イラスト
齊藤きよし(さいとう・きよし)
忍術研究家。デザイナー。イラストレーター。パルクール講師。桑沢デザイン研究所卒業後、某自動車企業勤務を経て独立し、現在は「Shinobi Design Project」を立ち上げ活動。自ら古典的な忍術を研究・修行・実践し、現代の仕事や暮らしに活かせる生きた忍術を探求。学校等で忍術を活かした体験・実践的な情報教育の指導も行う。著書に『図解 万川集海』。「SDP STORE」にて忍器・忍具の製作と販売も行う。
X(旧Twitter)アカウント:きよし|デザインと忍者とパルクール(@Kiyoshi_Design)
公式ホームページ:Shinobi Design Project