20名以上の専門家が集結
――今回のイスラム特集には、どんな著者の方々が参加されたのでしょうか?
担当 大学の先生が中心ですね。今回だと、イスラム建築や歴史研究の第一人者と呼ばれる方々に集まっていただきました。イスラムは対象範囲がとても広いため、中近東はもちろん、イベリア半島や中国、東南アジアなど、さまざまな地域に詳しい研究者の方々が関わっています。
――地域ごとに専門の研究者がいらっしゃるんですね。
担当 はい、そうなんです。ただ、たとえば同じオスマン朝でも、研究分野が違えば複数の先生にご協力いただくことになります。担当がかなり細分化されるので、「この1見開きだけ」をお願いするというケースも珍しくありません。
――となると、参加される先生の人数も多くなるのでは?
担当 今回は20人以上の専門家にご協力いただきました。アルハンブラ宮殿やバグダードといった有名な建築・都市から、造幣所やコーヒーハウスといった世俗建築まで、幅広く取り上げることができたのは、まさにその道の専門家さんたちのおかげです。さらに今回は、居酒屋のおつまみや公衆浴場、武器・甲冑など、暮らしや文化にも踏み込んで解説しているので、新しい発見がたくさんありました。そのぶん、1ページの情報量はものすごいですが…(笑)。
―――おすすめの都市はありますか?
担当 ダマスクスやバグダードといった王道の都市は読んでいてやはり興味深いです。
個人的には、トンブクトゥやガルダイアといったアフリカ都市、キプロスやタンザニアといった“珍しい国”の都市は他ではなかなか見られないのでおすすめです。
――驚きの情報もあったとか?
担当 実は、当時のイスラム文化は、ヨーロッパよりも発展していた面があったんです。
たとえば金融制度では、イスラム圏でコインが鋳造され経済が整備されていましたし、礼拝でカアバ神殿の方角を正確に知る必要があったため、天文学などの学問も高度に発展していました。
現代の文化の礎を築いた一つと言っても過言ではありません。そうした背景を、都市や建築と絡めて紹介しているので、読み物としても楽しめる内容になっています。
世界に1つだけのイラスト
――都市や建物のイラストもかなり印象的ですが、どのように制作しているのでしょう?
担当 まずは、イラストの参考になる資料を専門家の先生方にご提供いただき、そこから方向性や描くべきポイントを整理していきます。資料のなかには、中世・近世に描かれた鳥瞰図や絵画など、非常に貴重なものも含まれています。なかには、先生しか所蔵していない資料を使うこともありますね。
――昔の資料だけで、あのようなイラストが描けるものなんですか?
担当 意外と、当時の姿を再現できるだけの資料はあるんです。ただ、それを魅力的に表現できるのは、イラストレーターさんの力量あってこそ。
今回の特集は、イラストレーターさんの力がなければ成り立たなかったと思います。ラフの段階からかなり感動しました(残念ながら、ここではお見せできませんが…)。
――なかでも特に力を入れたイラストはどれでしょうか?
担当 うーん…どれも思い入れがあるので難しいのですが、あえて挙げるなら「預言者のモスク」ですね。時代が古いぶん再現が難しく、当時の様子をどう表現するか、先生と何度も打ち合わせを重ねました。どのイラストにも言えることですが、資料だけでなく、先生の知見や解説と矛盾がないよう調整しているので、どのイラストも“世界に1つだけ”のものです。ぜひ注目していただきたいです!
――導入には楽しい要素もあるとか?
担当 はい。都市や建築を理解するには、イスラム教やイスラム圏の歴史の知識が欠かせません。でも、歴史に苦手意識がある方もいると思います。そこで、導入パートのイラストは、“仕事猫”でもおなじみのくまみねさんに担当いただきました。
ポップで楽しい誌面になるよう工夫したので、気軽に読めると思います。私自身も楽しく読めましたので、ぜひご覧いただきたいです!
初の特別特典にもチャレンジ
――6月号が古代オリエント特集、そして今回の7月号がイスラム特集と、2号連続で歴史系が続いていますね。何か特別な仕掛けがあるとか?
担当 そうなんです。2号連続で歴史を扱うのは、「建築知識」ではなかなかありません。
しかも、イスラムと古代オリエントは歴史的に少しつながりもあるため、ぜひセットで読んでいただきたいと思っていました。
そこで今回は、両号をご購入いただいた方を対象に、背景や素材に使える線画データをプレゼントする特典をご用意しています!
――詳しい特典内容は、下記の記事からご覧いただけます。
👉 https://online.xknowledge.co.jp/24275/
イスラム特集の舞台裏、いかがでしたか?
今後も、編集部のちょっとした裏話や制作のこだわりを、こっそり(?)ご紹介していきますので、次回もどうぞお楽しみに!