窓・扉の”開き”と”形”を意識でガラッと変わる!「っぽく」描けるファンタジー背景講座[第5回]

「背景を学ぶハードルを下げる」をテーマに、建築の歴史を解説する新連載!ファンタジーや異世界ものでよく参考にされる西洋の建物を、「ここだけ知っておけばそれっぽく描ける」ポイントにしぼって解説します。
第5回のテーマは「窓・扉」。建物の外観に必ずついている窓や扉は、その形や動きで印象が大きく変わります。今回は"開き"と"形"の2点で「っぽさ」をマスター!

窓・玄関は「手癖」が出がち

窓や玄関は、特に手癖で記憶の中の形=日本の形、で描いてしまいがちなパーツです。
西洋の窓、扉の基本を理解すれば、さっと描いても「っぽい」形が描けるようになるでしょう。

「っぽい!」ポイント【1】
西洋の窓・扉は内開き/縦スライド

西洋の扉が基本的に内開きになっているのは、侵入者を防ぐ際に内側から扉を押さえられるように…というのは、ご存知の方も多いでしょう。

窓も同様に内開きですが、その外側についている雨戸は外開きです。混同しないようにしましょう。

また窓、扉とも、西洋ではスライドする場合は基本縦方向で、横にスライドする形はアジアに多い形です。

城の門などの「重い扉を落とす」形も、侵入者を意識したつくりといえます。

「っぽい!」ポイント【2】
「三角」「段々」は西洋高級建築の顔

連載の初めに、ローマ神殿のアーチを「西洋っぽさ」を形作る要素と紹介しましたが、
高級感のある装飾として、窓や玄関の上に三角形の装飾(ペディメント)や、
段々になった張り出し(コーニス)がついていることがあります。

これはギリシャ神殿の時代から続く、「伝統的な西洋建築の顔」といえるでしょう。

おまけ:イギリス「っぽい!」ポイント
横長の窓枠

西洋の窓は基本縦長…と何度か説明しましたが、ハーフティンバーの家で、「横長の窓枠に、数枚の窓が並ぶ」形もあります。
主にイギリスで見られる様式です。

この形の窓は多くが固定されていて(はめ殺し窓)、開くことはありません。

本連載で「西洋っぽい形」との比較で出る「日本っぽい形」は、主に昭和までの伝統的な家を例に挙げています。

次回は番外編として、日本の伝統的な家と現代の家の違いについて深堀りして、それをふまえた西洋の家との描き分けについてもお話したいと思います。お楽しみに。

「っぽく」描ける!ファンタジー背景講座 記事一覧

著者プロフィール

犬丸

大手ゲーム会社に十年ほどグラフィッカーとして勤務。
退職後、フリーとして漫画やハウツー本などを制作(他、パース講師、ゲーム制作協力、背景アシスタント、シナリオ制作など)。
趣味で古代〜近代くらいの建築(主に西洋)の書籍を数百冊ほど収集している。
著書に『かんたん! マンガパース術』『かんたん! クリップスタジオ漫画術』(いずれも新書館)など。
X/@kuroinusha

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