地図アプリより詳しい、戦国きっての地理オタク=忍者

インフラが整備された環境で生活している私たちは、土地に対する意識がどうしても希薄になりがちです。
しかし、ひとたび災害が起こると、その土地の潜在的なリスクが大きな被害につながりかねません。
実は、地理調査は忍者の重要な仕事にひとつでした。
身の安全を確保し、作戦を成功に導くために、土地をよく理解することがとても大切だったのです。

土地の条件が戦の結果を左右した

『万川集海』陽忍(下)目利きの編には、地形から敵の数に至るまで、さまざまな情報を見積もる方法が記されています。
戦における忍者の役割は、敵軍の情報を的確に調査・報告することや、思いもよらぬ場所から急襲(きゅうしゅう)や放火によって敵を撹乱(かくらん)することにあります。
そのため敵国の山の大小・高低・険易(険しいか平たんか)・草木の状態や、敵城の近辺、戦闘予定地、味方の陣地などを詳細に調べ上げるのです。
忍者に地理調査のイメージは、ないかもしれませんが、こういうことが本来の忍びの務めでした。

山は陣地に利用される重要な地形なので、念入りに調べます。たとえば「険阻な山は小勢の歩兵で守るのに適していて、逆に平易な地形は大勢や騎兵の布陣に有利」など、地形によって作戦が変わるからです

海や川から攻める場合は、船で上陸しやすい場所を知る必要があるので、川の流れや周辺の草木の様子などを調査します

田んぼの深さも戦においてとても重要でした。軍勢で攻め込むとき田んぼが深いと足を取られて進軍速度が落ちてしまうからです。逆に考えれば、田んぼは自陣を守る要害として機能するわけです

 

 

地域の安全性と危険性の両方を把握しておく

住んでいる地域の地図を片手に、通勤・通学路や避難所までのルートを散策してみてください。
重要なのは、マップを確認するだけで知ったつもりにならないこと。
実際に歩いてみないと、肝心な情報は分からないものです。
サイクリングやジョギングのときに、いつも使っているルートとは別の場所を訪れてみるのもお勧めです。
防災の観点から近所を観察してみると、意外なことに気づけるはずです。

自治体が出しているハザードマップをもとに、近隣地域を散策し、危険箇所を確認するとよいでしょう。土砂災害や河川の増水、津波による浸水などのリスクと地形の関係を調べたり、避難所までのルートを数パターン確認したりしてみてください

 

第4回へ、つづく

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ページ数    128
判型        A5判

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解説

習志野青龍窟(ならしの・せいりゅうくつ)

忍道家。武術家。松聲館技法研究員。港区防災アドバイザー。各種イベントや国内外のメディアに多数出演。映画の忍術指導も担当。山修行や断食の実践、稽古、国際忍者学会への参加など精力的に活動している。今に役立つ温故知新の心身運用法を指導している。小学校や大学などでセミナーや教室なども開催している。
X(旧Twitter)アカウント:習志野青龍窟 忍道家(@3618Tekubi
YouTube:忍道家 習志野修行チャンネル

 

イラスト

齊藤きよし(さいとう・きよし)

忍術研究家。デザイナー。イラストレーター。パルクール講師。桑沢デザイン研究所卒業後、某自動車企業勤務を経て独立し、現在は「Shinobi Design Project」を立ち上げ活動。自ら古典的な忍術を研究・修行・実践し、現代の仕事や暮らしに活かせる生きた忍術を探求。学校等で忍術を活かした体験・実践的な情報教育の指導も行う。著書に『図解 万川集海』。「SDP STORE」にて忍器・忍具の製作と販売も行う。
X(旧Twitter)アカウント:きよし|デザインと忍者とパルクール(@Kiyoshi_Design
公式ホームページ:Shinobi Design Project