シルエットで民家を描き分ける
民家は特に、自分が見慣れている「家らしい」形をつい手癖で描いてしまいがちです。
西洋民家の「上に伸びる」イメージ、日本民家の「横に広がる」イメージを基本に、西洋「っぽい」シルエットのポイントを見てみましょう。
「っぽい!」ポイント【1】
上の階が広い
上の階が広い形は、ヨーロッパの中央から北にかけての一部地域(特にドイツなど)でみられます。
起源ははっきりしませんが、そのメリットはいくつか考えられます。
なお「上の階が広い」建物は、日本では温泉街などで一部見られますが、あまり一般的ではありません。
その理由として、日本の民家建築は柱が比較的多く、壁も薄い上に障子や襖などを多用していたり、また高くても2階までの建物が主流で、それも中2階(厨子二階)のように2階部分が低くつくられたり…といった特徴があります。そのため、民家でも3階、4階建てが珍しくない西洋建築に比べて建物の重量によるたわみが問題にならなかったのでは、と考えています。
「っぽい!」ポイント【2】
窓は縦長、雨戸は2つ
窓は特に、つい見慣れた横長の枠で描いてしまいがちなパーツです。
窓周りのシルエットを縦長にするだけでも、西洋っぽさが出ます。
古い家は基本的には「西洋の窓は枠が縦長、両開きの雨戸が2つ」、「日本の窓は枠が横長、雨戸入れが1つ」です。
描くだけで西洋っぽくなる「両開きの雨戸」ですが、雨を防ぐというよりも、光を遮ったり暑さ寒さを調整するカーテン的な意味があります(鎧戸)。
雨戸(鎧戸)がない西洋民家も多く、特にイギリスなどは基本的に雨戸はありません(まれに窓の「内側」に、木の鎧戸がついていたりします)。
「っぽい!」ポイント【3】
庇は目立たない
庇、特に窓や玄関の上の庇(軒)は実は「日本的な形」で、ヨーロッパではあまり見られません。
また、建物自体の屋根の庇についても、家や玄関のそれほどではありませんが、基本的に目立たないつくりが多いです。
(屋根については、次回にまた詳しくお話ししたいと思います)
次回は「西洋の民家の種類」のお話です。
屋根のシルエットの「っぽさ」、おおまかな地域ごとの民家「っぽさ」などを紹介したいと思います。
「っぽく」描ける!ファンタジー背景講座 記事一覧
著者プロフィール
犬丸
大手ゲーム会社に十年ほどグラフィッカーとして勤務。
退職後、フリーとして漫画やハウツー本などを制作(他、パース講師、ゲーム制作協力、背景アシスタント、シナリオ制作など)。
趣味で古代〜近代くらいの建築(主に西洋)の書籍を数百冊ほど収集している。
著書に『かんたん! マンガパース術』『かんたん! クリップスタジオ漫画術』(いずれも新書館)など。
X/@kuroinusha
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