東京文化会館
まず最初は、上野駅公園口を出てまっすぐ進むと左手に見えてくるのが、東京文化会館。1961年、日本のモダニズム建築の父とも言うべき、前川國男が設計した建物です。
建物内に入ってもまだ外にいる気分です。ガラス張りで、公園の緑をインテリアに取り込んでいます。落ち葉のような床のタイル模様は、前川事務所の所員が膨大な時間をかけて編み出した自然さです。
そこから再び中に入ると、芸術のための人工空間が広がります。合理的に配置された座席と芸術家による反響板が演目への没入を助けます。厚い壁の向こうはひとときの仮想現実のための世界です。
幕間の時を過ごすホワイエは、再び自然を呼吸できる場所。一様ではなく、変化に富んだ大地のようです。大小各ホールへと至るスロープは、ビクともしない坂道です。入念な設計と施工で築いた空間が、揺らぎのある公園の開放感と厳格な芸術の両立という難題を解いています。
【DATA】 東京文化会館 台東区上野公園5-45 JR「上野」( 公園口)徒歩1分 ・音楽資料室 火~金 11:30~18:30 土・日・祝 11:30~17:00 休:月(不定休あり) ・レストラン フォレスティーユ精養軒 11:00~19:00 ・カフェ ヒビキ 月~金 11:00~18:00 土·日·祝 10:00~18:00 ・和小物ショップ 匠音 10:00~19:00 ・ミュージックセレクトショップ Waltz 11:00~19:00※ホール公演日により営業時間が異なる。詳細は問い合わせを。
国立西洋美術館
東京文化会館の斜め前には、2016年に世界文化遺産となった国立西洋美術館があります。設計したのは、ル・コルビジェ。コルビジェは、前川國男の師匠でもあります。
戦後、第二次世界大戦中の敵国人財産としてフランスの国有財産となった松方コレクションを寄贈返還するにあたり、建設された美術館です。
最初の展示空間「19世紀ホール」は光が劇的です。見上げれば三角形のトップライトがあって、外光が鋭角の切れ込みを強調しています。ここに来る前には、対照的に天井の低い外部のピロティをくぐり、それ以前にはやはり鋭い幾何学の外形を太陽の下で見てきたのでした。
2階展示室の陰影を生んでいるのは建設当時からの日本人の反対を押し切り、外光を導入するために設計した装置です。建築の内外をつなげて考える姿勢や工業主義は、確かに19世紀以前にはなかったもの。しかし、光のドラマへの志向はアカデミックな絵画の明暗法とも通じています。表面的な機能を超えた建築を、新しい形で目指したル・コルビュジエの熱情がわかる美術館です。
【DATA】 国立西洋美術館 台東区上野公園7-7 JR「上野」徒歩1分 開室時間:9:30~17:30 金・土曜日 常設展・企画展とも20:00まで ※入室は閉室の30分前まで 休館日:月(休日の場合は翌平日)、年末年始
西洋美術館を越え、噴水の広場の奥には、「東京都美術館」があります。こちらも前川國男が設計した建物です。東京文化会館はコンクリートだったのに対し、こちらは内も外もレンガ調で、いわゆるモダニズム建築との違いを楽しめます。
そのほかにも上野恩賜公園内には、「東京国立博物館本館」や「表慶館」「東洋館」、谷口吉生設計の「法隆寺宝物館」、安藤忠雄が改修した「国際子ども図書館」など、1日でも時間が足りないほど、名建築がたくさんあります。
上野以外にも、東京のモダン建築をもっと知りたい!という人は、こちらの動画もぜひご覧ください。
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