地域ごとに違う民家の材質・屋根の角度
長い木材が豊富な土地、良質な石に恵まれた土地、雨雪が少なく乾燥した地域……など、
建物の材料や形、シルエットは、その地域の資源や気候などによって変わります。
こうした違いは、場面を「っぽく」描き分けるヒントになるでしょう。
ハーフティンバー(木組+漆喰)の民家
木の柱や梁が露出しているのが特徴的な家です。
壁は、木で編んだ網状の下地に漆喰を塗り込めたり、レンガなどで埋められます。
白い壁が多いのは、かつては防水として、獣脂を混ぜた石灰が塗られたためです。
フランス北部やドイツ、イギリスなどで主に見られます。
石造りの民家
石またはレンガを積み上げた家です(組積造)。
木組よりも材料が重く長さも限られるため、窓は小さめになる傾向があります。
窓や玄関などの枠部分が、木でつくられることもあります。
イギリス、イタリアや南仏、スペイン南部などで見られ、採れる石の色によって建物の色も変わるのが分かりやすいです。
木でできた民家
柱から壁まで、釘などをほとんど使わず、木を積み重ねてつくる家です。
屋根の表面は、おもにスレート(薄く割れる性質のある岩)などで覆われます。
(現在スイスのホテルなどで見られる大きく豪華な山小屋は、19世紀にドイツ人建築家がつくった比較的新しいもので、伝統的な山小屋とは屋根の角度や、窓の大きさ、数などに違いがあります)
真っ直ぐな木が採れやすい、山岳地帯、特にスイスなどで見られます。
土でできた民家
おもに土や、日干しレンガを使った家です。
日干しレンガは焼きレンガより安価ですが、耐水性が低く強度も少し下がります。
材料はワラや粘土、砂や小石などで、紀元前4000年から使われています(焼きレンガは紀元前3000年)。
エジプト、アフリカ、メソポタミアなど暑くて乾燥した気候の土地でよく見られ、ヨーロッパでは少ないです。
建物全体のシルエットで描き分けができれば、表現が伝わりやすくなると思います。
次回は窓や屋根、玄関などのパーツのお話になります。お楽しみに。
「っぽく」描ける!ファンタジー背景講座 記事一覧
著者プロフィール
犬丸
大手ゲーム会社に十年ほどグラフィッカーとして勤務。
退職後、フリーとして漫画やハウツー本などを制作(他、パース講師、ゲーム制作協力、背景アシスタント、シナリオ制作など)。
趣味で古代〜近代くらいの建築(主に西洋)の書籍を数百冊ほど収集している。
著書に『かんたん! マンガパース術』『かんたん! クリップスタジオ漫画術』(いずれも新書館)など。
X/@kuroinusha
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