シルエットの描き分けで民家の”っぽさ”がアップ!「っぽく」描けるファンタジー背景講座[第3回]

「背景を学ぶハードルを下げる」をテーマに、建築の歴史を解説する新連載!ファンタジーや異世界ものでよく参考にされる西洋の建物を、「ここだけ知っておけばそれっぽく描ける」ポイントにしぼって解説します。
第3回のテーマは「民家の材料と形」。民家のシルエットの違いを描き分けるには、何でできているか?を考えるのが近道です!

地域ごとに違う民家の材質・屋根の角度

長い木材が豊富な土地、良質な石に恵まれた土地、雨雪が少なく乾燥した地域……など、
建物の材料や形、シルエットは、その地域の資源や気候などによって変わります。

こうした違いは、場面を「っぽく」描き分けるヒントになるでしょう。

ハーフティンバー(木組+漆喰)の民家

木の柱や梁が露出しているのが特徴的な家です。
壁は、木で編んだ網状の下地に漆喰を塗り込めたり、レンガなどで埋められます。
白い壁が多いのは、かつては防水として、獣脂を混ぜた石灰が塗られたためです。

フランス北部やドイツ、イギリスなどで主に見られます。

石造りの民家

石またはレンガを積み上げた家です(組積造)。
木組よりも材料が重く長さも限られるため、窓は小さめになる傾向があります。
窓や玄関などの枠部分が、木でつくられることもあります。

イギリス、イタリアや南仏、スペイン南部などで見られ、採れる石の色によって建物の色も変わるのが分かりやすいです。

木でできた民家

柱から壁まで、釘などをほとんど使わず、木を積み重ねてつくる家です。
屋根の表面は、おもにスレート(薄く割れる性質のある岩)などで覆われます。
(現在スイスのホテルなどで見られる大きく豪華な山小屋は、19世紀にドイツ人建築家がつくった比較的新しいもので、伝統的な山小屋とは屋根の角度や、窓の大きさ、数などに違いがあります)

真っ直ぐな木が採れやすい、山岳地帯、特にスイスなどで見られます。

土でできた民家

おもに土や、日干しレンガを使った家です。
日干しレンガは焼きレンガより安価ですが、耐水性が低く強度も少し下がります。
材料はワラや粘土、砂や小石などで、紀元前4000年から使われています(焼きレンガは紀元前3000年)。

エジプト、アフリカ、メソポタミアなど暑くて乾燥した気候の土地でよく見られ、ヨーロッパでは少ないです。

建物全体のシルエットで描き分けができれば、表現が伝わりやすくなると思います。
次回は窓や屋根、玄関などのパーツのお話になります。お楽しみに。

「っぽく」描ける!ファンタジー背景講座 記事一覧

著者プロフィール

犬丸

大手ゲーム会社に十年ほどグラフィッカーとして勤務。
退職後、フリーとして漫画やハウツー本などを制作(他、パース講師、ゲーム制作協力、背景アシスタント、シナリオ制作など)。
趣味で古代〜近代くらいの建築(主に西洋)の書籍を数百冊ほど収集している。
著書に『かんたん! マンガパース術』『かんたん! クリップスタジオ漫画術』(いずれも新書館)など。
X/@kuroinusha

もっと頑張りたい時のおすすめ記事

画力の底上げは基礎が近道!基本から分かる初心者向けパース教本おすすめ6選
背景を描きたいのにパースに不安があって始められない!そんな時におすすめの本を紹介しています

名作を知れば教養もセンスもアップする!世界の名建築が分かる本7選
住宅、教会、宮殿など、さまざまなタイプ・様式の建築の歴史が学べる本を紹介。具体的に参照する建築を探したい時、もっと知識を深めたい時におすすめの本がそろっています

背景画をワンランクアップ!今すぐ試したくなる”神絵師”のテクニックがつまったTIPS本5選
「っぽい」ポイントを踏まえて描いた絵、さらに目を惹く絵にするためには?パース、色彩、構図などさまざまな視点のテクニックが盗める本をご紹介

創作インプットや時代考証に役立ちまくり!ファンタジー世界の背景作画資料本7選
さらに詳しく描写したいなら、実際の資料を参照するのが一番!ヨーロッパ、アジア、アメリカなどの建物・民家の資料に役立つ本をご紹介