「和室」を知るには欠かせない!
座敷の要「床の間」を立体イラストで徹底解剖
①床の間(とこのま)
床柱や床框などで構成される座敷飾を指す呼称。通常は床(とこ)を一段高く設え、掛軸あるいは生け花などを飾ります。なお、「床」と「床の間」は本来の意味は同じですが、藤井厚二は、「床」が花や書画などを飾る空間であるのに対し、「床の間」はそれに棚などを合わせたもので、精神上の美的な要求を満たすため区画された空間、と区別しました。この考えは後の近代の建築家たちにも影響を与え、違い棚や付書院などを組み込んだ複雑な「床の間」が多数つくられました(床の間のバリエーションは、本誌60~61ページで詳しく解説しています!)
②床脇(とこわき)
床の間脇の柱間につくられる座敷飾りを指す呼称。床脇に設けられる棚を床脇棚といい、天袋と地袋、棚板の組み合わせによってさまざまな種類があります。縁側(外)のある側に床の間、その反対側に違い棚を設けたものが最も一般的な形式とされます
③天袋(てんぶくろ)
床脇の最上部に設けられた袋棚
④地袋(じぶくろ)
床脇の下部に、地板に接して取り付けた袋戸棚。床脇の間口いっぱいにつくるケースもある一方、狆潜りがある場合に床脇壁(床の間と床脇の隔壁)側には設けないケースも
⑤地板(じいた)
床の間や床脇の床に敷く板。またはその板敷きの部分のこと
⑥狆潜り(ちんくぐり)
床脇壁で、800㎜程度の高さに無目を入れてその下部を開口としたもの。床脇の奥まで光を入れ、空間的な奥行きを出す効果があります。犬潜りとも
⑦床柱(とこばしら)
床の間脇に立つ化粧柱。ヒノキやマツ、ツガなどの柾目の通った材を面取りした角柱が本式とされます。くだけた感じの床の間では、磨き丸太や皮付き丸太、絞り丸太などを用います
⑧相手柱(あいてばしら)
床の間で、床柱の反対側の位置に用いられる柱。相手柱は特別な柱にはせず、ほかの室内の柱と同材を使うことも
⑨床壁(とこかべ)
床の間の内壁のこと。張付壁や土壁とするのが一般的です。書院造の床壁は張付壁で、その上に水墨画や濃絵といわれる濃彩な絵を描いたものが多くあります。現代和室では、簡易な方法として、石膏ボード下地に和紙を張ることも。床の間の正面の壁は大平壁といい、花入れを掛けるための中釘や、掛軸を掛けるための軸釘が打たれます。床壁は張付壁が慣わしとされていたものを千利休が土壁に改め、以降、床飾りの主役として大平壁に花入れが掛けられることとなりました
⑩落し掛け(おとしがけ)
床の間上部の小壁を受け止める横木のこと。一般的に、長押(長押がない場合は鴨居)の高さよりも上に設けます。材種の選定は床柱や床框との組み合わせで決められますが、スギの角材を用いることが多く、正面の見付けを柾目とし、下端の見込みを杢目(柾目でも板目でもなく、不規則で複雑な木目)とします
⑪平書院(ひらしょいん)
書院(付書院)とは、出文机から発展した床の間脇に設ける装置を指します。平書院はその略式で、書院窓だけを設けた形式であり、略書院ともいいます。平書院は近世になって初めて現れたものとされ、付書院と異なり棚板(書院棚)がありません。平書院の間口は、本来1間(約1.8m)を定法としていますが、2間(約3.6m)など広い間口にしたものや、小間では4尺8寸(約1・45m)の台目幅にしたものなどさまざま
⑫床框(とこがまち)
床の間の前端に渡す化粧横木。框とは、床に段差があるとき、高いほうの床の末端に取り付ける化粧横木のこと。取り付ける位置によって、縁框や上がり框などの種類があります。床框を設けた床の間は框床と称され、床框と同一面に本畳を敷き込む畳床のほか、薄縁床や板床などの種類があります。なお、建具の四周を固める部材のことも框(竪框・横框)といいます
以上のほか、本誌ではバリエーションやそのほかの座敷関連の用語なども豊富な図を使って解説しています!
名称や基礎知識、歴史、バリエーションなど
「和風住宅」をゼロから学ぶための特集です!
玄関や座敷、床の間、縁側、庭、茶室など、部位・室ごとにピックアップし、豊富な図・イラストで和風住宅を大解剖! 特集の末尾には和風用語1,100語の索引も収録しているので、キーワードから気になる用語を調べることもできます。和風住宅の設計に役立つほか、イラストや小説などの創作資料としても活用できる1冊です。
建築知識23/09 和風住宅全史
定価 1,800円+税
ページ数 134
判型 B5判
発行年月 2023/08
ISBN 4910034290932