第8回日本エコハウス大賞の最終審査会が2024年9月24日(火)に開催されます。
視聴チケットはこちら(https://t.livepocket.jp/e/ov012)
2015年に日本エコハウス大賞を立ち上げてから9年間が経ちました。この記事では、歴代グランプリの作品紹介と当時の様子を振り返ります。どんな思いで建物がつくられ、どんな視点でグランプリが選ばれたのか、ぜひご覧ください。
第1回グランプリ(2015年)「開放する北国の家」もるくす建築社
初代グランプリは、秋田のもるくす建築社 佐藤欣裕さん。若干31歳でのグランプリ受賞。
敷地は秋田県。日照が少ないエリアのため、温熱的に弱点といわれる窓を小さくすることがセオリーでしたが、この建物は性能を担保しつつ、大きな窓を大胆に南面に設けています。
「日本海側の冬の曇天は太陽熱利用には不向きな土地であるが、住まいの開放化には降り積もる雪で閉鎖的になった気持ちまで開く力があると信じている」という佐藤さんの力強いコメントと、その言葉をきちんと表現するおおらかで豊かな空間に票が集まりました。
その後、佐藤さんが第7回の審査員を務めることになるとは、この時は誰も想像していませんでした。
第2回グランプリ(2016年)「スキップするトンネルハウス」設計島建築事務所
宮城の設計島建築事務所 三浦正博さんの自邸が受賞。
「妻は寒いと機嫌が悪くなり夫婦の危機を感じた。だから暖かい家を建てようと思った」と、エコハウスに挑戦した背景を話す三浦さん。ユーモラスなプレゼンテーションが印象的でした。
建物は、間口が6m、奥行き21mの細長いトンネル形状。「小さく建てて広く住む」というコンセプトのもと、冬期の日射を最大限得るため、正面(南西)と裏(北東)の両サイドは間口いっぱいに窓を設けています。
昨今の“ハリボテ化”する内装へのささやかな抵抗として、構造材などをそのままあらわしています。建築費は、今では考えられませんが1,700万円でした!
第3回グランプリ(2017年)「大間の家 –松前パッシブハウス–」キーアーキテクツ
「近い未来の普及版を作っていく」という強い意志の伝わるキーアーキテクツの森みわさんのプレゼンテーション。
建物は、「南を向いてパッシブに暮らす」ための条件に恵まれた土地に建てられています。その分、プレッシャーも感じていたという設計者の森みわさん。この地で施主に提案したのは46坪の2世帯住宅。
当時の日本エコハウス大賞の応募作品の中では、群を抜いて高い性能(0.26W/㎡K)が確保されており、細やかなパッシブ設計やそれらを証明する温熱計算もカンペキ(この頃はパッシブハウス基準の応募作品はまだ少なかった)。
さらに、薪調理器やカーポートの屋上緑化など、実験的な試みも多数されており、未来に向けたチャレンジ精神も含めて受賞となりました。
第4回グランプリ(2018年)「グランドピアノのある家」アイプラスアイ設計事務所とオーガニックスタジオ新潟
アイプラスアイ設計事務所とオーガニックスタジオ新潟のコラボ作品。
「3回目の応募にして念願のグランプリ!」と力強くガッツポーズをしたオーガニックスタジオ新潟の相模稔さんの姿は忘れられません。そんな熱い最終審査会でした。
建物は中間領域をテーマに設計が行われています。建て主の要望は「リビングにグランドピアノが置ける暖かい家」。その希望どおり、1階室内は劇場のようなワンルームを意識し、どこからでもピアノを眺められます。
今では当たり前になりましたが、吹抜けのあるワンルーム空間でも暖かいのは断熱・気密性能が高いからこそ(吹抜けは寒い!という話がよくあった)。
受賞の最大の理由は、バランスの取れた作品であること。そして、設計事務所と地域工務店がコラボレーションした質の高い仕事のあり方という点も評価され、グランプリ受賞へとつながりました。
第5回グランプリ(2019年)「はじめてのエコハウス 水戸の家」サンハウス
サンハウス野辺裕章さんによるはじめてのエコハウスとしての自邸。オーバースペックながら、独学でエコハウスを学び、今自分ができることをやり切ったことが伝わる力強いプレゼンに、満場一致でグランプリに。
2000万円~2500万円の家を手掛けるサンハウス(2019年当時)では、これまで長期優良住宅はつくってきたものの、それ以上の高断熱高気密住宅を提案する機会が少なかったという。よりよい家づくりを提供したい!という思いのもと、同社が顧客に提案するうえで見本となる自邸に取り組みました。
「緑のおすそ分け」としてまちに開いた佇まいに三澤文子審査員も「私もやってみたい!」とコメント。一方で、野辺さんの人柄を具現化したようなおこもり感のある室内空間の設えは、外に積極的に開く住まいのあり方とは違ったエコハウスになっていました。あえて西日を取り込むカメレオンの室内飼育空間の設置も面白かったです。
★2024年の第8回日本エコハウス大賞では、サンハウスのエコハウスがノミネート10作品に選ばれました。約5年の時を経てバージョンアップした同社のエコハウスは必見です。
作品はこちら https://online.xknowledge.co.jp/20232/
こぼれ話
日本エコハウス大賞がスタートした2015年は、省エネルギー基準(断熱等級4)の家が応募作品の過半数を占めていたものの、2017年には上位基準であるHEAT20・G1を達成した住宅が過半数を占めるようになりました。2018年、2019年にはG2レベルも珍しくなくなり、意匠のレベルも高い「真の良質な住宅」といえるものが多数応募されました。まさに住宅業界にとって「断熱成長期」だったといえる5年間でした。
そして2020年1月にシンポジウムで休止宣言した直後、新型コロナ感染拡大によって私たちをとりまく状況が大きく変化していきます。
2022年に再開した理由は、建物コストが跳ね上がり誰もが手に入るエコハウスの模索が必要となったこと、大型台風や猛暑対策に直面し、家づくりの方法が変わってきたこと、注文住宅の減少による実務者の次の一手が求められていること、カーボンニュートラルに向けた省エネだけでなく創エネの可能性を探ることなど、たくさんの課題が見えてきたから。そして、多角的な視点をもったエコハウスのつくり手がもっと増えてほしいと思ったからです。
第6回グランプリ(2022年)「風土と共に育つ家」パッシブデザインプラス
コロナ禍を経て、再開した第6回日本エコハウス大賞からはオンラインで最終審査会を開催。毎年、応募し続けていたパッシブデザインプラスがついにグランプリに!圧倒的な外構空間の豊かさが受賞へと導きました。
建物は、元々あった擁壁を解体し、解体時に出た廃棄物を有効活用しながら、土中の環境改善を施主も巻き込んだワークショップ形式で実現しました。
審査員からは、「こんな外構の住まいが増えてほしいと素直に思える作品だった」とコメントがありました。
第7回グランプリ(2023年)「築63年木造賃貸アパートの再生 tede」アッドスパイス+村上康史建築設計事務所
7回目にして初めてのリノベーション作品がグランプリを受賞。しかも、築68年の木造賃貸アパート! 新築中心だったコンテストの歴史的な分岐点となりました。
建物は、京都に建つ築古のモクチンアパート。誰もが建て替えをするような建物を耐震、温熱ともに性能を向上。
予算が厳しい中、1階は床にレンガタイルを敷き、植栽を施して明るく開放的な屋外テラスを設けたり、2階住居には土間付きの半屋外空間を整備したりといった設計の工夫が施され、賃貸の収支的にも成功を納めています。
過去の受賞作品はこちら https://builders-ecohouse.jp/award/
過去の最終審査会のレポート記事はこちら 第2回、第3回、第4回、第5回
2024年版!第8回日本エコハウス大賞のノミネート10作品はこちら
2024年のグランプリは誰の手に!?
第8回日本エコハウス大賞 最終審査会を9月24日に開催します!
視聴チケットはこちら https://t.livepocket.jp/e/ov012
応募総数115作品のなかから、一次審査(設計審査)を通過したノミネート10作品のプレゼンテーションと公開審査を実施します。審査員として、伊礼智、前真之、三澤文子、佐藤実、清水一人、大島芳彦、蒔田智則、斎藤健一郎が登壇。ノミネート10作品のつくり手によるプレゼンテーションや審査員との質疑応答を見て、オンライン視聴者たちも投票できることも公開審査の醍醐味です。
さらに、今年から審議を深めるために審査員による3大ディスカッションを実施します。
ディスカッションテーマ
□激変する新築市場に立ち向かう! エコハウスの最新トレンドを深掘り!
□性能アップだけじゃ物足りない!リノベーションで真の価値をどう引き出す?
□ビジネスチャンスは無限大!集合住宅、民宿、中規模木造で見つける次の一手!
6時間いつでも出入り自由。アーカイブ配信あり!エコハウスを手がける人は必聴のイベントです。
みんなで、エコハウスの課題と未来を一緒に考えませんか?
【概要】
日程:2024年9月24日(火)開場11:50/開演12:00/終演18:00
形式:zoom ウェビナー形式(事前申し込み制)出入り自由・アーカイブ配信あり
対象:建築関係者および建築学生に限らせていただきます
費用:3,000円(税別)
審査員:伊礼 智氏、前 真之氏 , 三澤 文子氏 , 大島 芳彦氏 , 蒔田 智則氏 , 佐藤 実氏, 清水 一人氏 , 斎藤 健一郎氏